9月の新刊:運動としての大衆文化

2021年 9月 8日 コメントは受け付けていません。

書影_運動としての大衆文化運動としての大衆文化
大塚英志(編)

判型:A5判上製
頁数:480頁
定価:6500円+税
ISBN:978-4-8010-0594-5 C0036
装幀:宗利淳一
9月下旬発売!

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文化と政治の結節点

現代のポピュラーカルチャーは,かつてのカウンターカルチャーに連なると同時に,戦時下のプロパガンダとも密接に結びついている。各種メディアが大衆の動員に向けて活用されてゆく戦前・戦中から,創作と需要が市場を軸に循環する現代のファンカルチャーまで,分断されたアカデミズムの近視眼を越えて政治的社会的水脈を掘り起こし,歴史のダイナミズムを捉える。

目次


「運動」する手塚治虫――「後衛」の実践  大塚英志


Ⅰ 「方法」としての文化工作

昭和八年のメディア・イベント――読売新聞「三原山火口探検」の研究  神松一三

鴨川をどりにおけるプロパガンダ――花街の中での戦争  萩原由加里

戦中婦人雑誌と「これでよいか こうしたら」  横田尚美

キャラメルの喩えとしての「子ども」――戦間期日本の洋菓子広告と童画風図案  前川志織

一九一〇年代の写真小説における両義性とその実践  山本忠宏

「人造人間」はなぜ泣くか?――田川水泡『人造人間』にみるマンガとアヴァンギャルド芸術の接点  孫旻喬

観客・丸山眞男  花田史彦


Ⅱ 協働/運動する「ファン」たち

『機動戦士ガンダム』と(再)放送の文化史  近藤和都

戦後日本におけるアニメーションのファン文化の興隆と意義
――渡辺泰のディズニー・クラブ関連資料とファン/研究活動を手がかりに  佐野明子

アマチュア特撮映画コンテストと特撮ファン共同体
――「グリーンリボン賞」(一九八四―一九九三)における観客参加型上映  板倉史明

子どもの読書とメディアミックス――読書環境の変化に注目して  團康晃

199X―200X アングラ空間の穴からみえた世界  藤岡洋

ニコニコ動画は「運動」だったのか?――協働という観点から見るポピュリズムとウェブ  鈴木洋仁

ボーカロイドムーブメントの誕生とマーケットに参加するアマチュア  アルバロ・ダビド・エルナンデス・エルナンデス

負けるためのプレイ・盛り立てるプレイ――LARPでの共同創造的なストーリーテリング  ビョーン゠オーレ・カム

街空間と運動としての女性向けメディアミックス  エドモン・エルネスト・ディ・アルバン


Ⅲ 歴史の記述される場所で

後藤総一郎と常民大学運動――「野の学」への希求  杉本仁

自らをどこに置きなおすか――「日本民俗学講習会」のあとさき  鶴見太郎

さらにいくつもの〈こども風土記〉のために・大正台湾編――『台湾小公学校児童文集』を読む  菊地暁

語り継ぐことと文化創造運動のあいだ――旧産炭地筑豊における試み  川松あかり

「職場の歴史」を考える  竹村民郎

大学からの社会運動――関東大震災後の東京帝大セツルメントとその後  内田力

史伝小説という戦略――海音寺潮五郎における「西郷隆盛」の人物造形とその影響  室井康成

編者/執筆者/訳者について
大塚英志(おおつかえいじ)
1958年生まれ。まんが原作者,批評家。博士(芸術工学)。国際日本文化研究センター教授。専門は,まんが表現史,まんが創作論。主な著書に,『「暮し」のファシズム――戦争は「新しい生活様式」の顔をしてやってきた』(筑摩書房,2021)などがある。

神松一三(かんまついちぞう)
1958年生まれ。讀賣テレビ放送。大阪府立大学経済学研究科博士後期課程在籍。専門は,メディア史。主な著書に,『「日本テレビ放送網構想」と正力松太郎』(三重大学出版会,2005)がある。
萩原由加里(はぎはらゆかり)
1979年生まれ。帝京大学講師。博士(学術)。専門は,アニメーション史。主な著書に,『政岡憲三とその時代――「日本アニメーションの父」の戦前と戦後』(青弓社,2015)がある。
横田尚美(よこたなおみ)
1961年生まれ。滋賀県立大学准教授。博士(学術)。専門は,服飾文化史。主な著書に,『20世紀からのファッション史――リバイバルとリスタイル』(原書房,2012)がある。
前川志織(まえかわしおり)
1976年生まれ。国際日本文化研究センター研究部特任助教。博士(芸術学)。専門は,広告デザイン史。主な著書に,『近代京都の美術工芸――制作・流通・鑑賞』(共著,思文閣出版,2019)がある。
山本忠宏(やまもとただひろ)
1976年生まれ。神戸芸術工科大学助教。専門は,写真表現,まんが表現史。主な著書に,『動員のメディアミックス――〈創作する大衆〉の戦時下・戦後』(共著,思文閣出版,2017)などがある。
孫旻喬(そんみんきょう)
1990年生まれ。北京第二外国語学院日本語学部講師。博士(文学)。専門は,日本マンガ史。主な論文に,「手塚治虫のストーリーマンガにおける「女性ロボット」――「働く身体」から「生む身体」へ」(『名古屋大学人文学フォーラム』2020)がある。
花田史彦(はなだふみひこ)
1991年生まれ。大手前大学・同志社大学・立命館大学非常勤講師。専門は,メディア史。主な著書に,『牧野守 在野の映画学――戦時下・戦後映画人との対話』(共著,太田出版,2021)がある。
近藤和都(こんどうかずと)
1989年生まれ。大東文化大学専任講師。博士(学際情報学)。専門は,メディア・スタディーズ。主な著書に,『映画館と観客のメディア論――戦前期日本の「映画を読む/書く」という経験』(青弓社,2020)がある。
佐野明子(さのあきこ)
1975年生まれ。同志社大学准教授。博士(言語文化学)。専門は,映像文化論。主な著書に,『動員のメディアミックス――〈創作する大衆〉の戦時下・戦後』(共著,思文閣出版,2017)などがある。
板倉史明(いたくらふみあき)
1974年生まれ。神戸大学大学院准教授。博士(人間・環境学)。専門は,映画学。主な著書に,『映画と移民――在米日系移民の映画受容とアイデンティティ』(新曜社,2016)がある。
團康晃(だんやすあき)
1985年生まれ。大阪経済大学講師。博士(社会情報学)。専門は,文化社会学・メディア論。主な著書に,『楽しみの技法――趣味実践の社会学』(共編著,ナカニシヤ出版,2021)がある。
藤岡洋(ふじおかひろし)
1971年生まれ。東京大学東洋文化研究所助教。専門は,人文情報学。主な著書に,『動員のメディアミックス――〈創作する大衆〉の戦時下・戦後』(共著,思文閣出版,2017)などがある。
鈴木洋仁(すずきひろひと)
1980年生まれ。東洋大学クローバル・イノベーション学研究センター研究助手。博士(社会情報学)。専門は,歴史社会学。主な著書に,『「三代目」スタディーズ――世代と系図から読む近代日本』(青土社,2021)がある。
アルバロ・ダビド・エルナンデス・エルナンデス(Álvaro David Hernández Hernández)
1983年生まれ。国際日本文化研究センタープロジェクト研究員。博士(学術)。専門は,文化社会学。主な著書に,『動員のメディアミックス――〈創作する大衆〉の戦時下・戦後』(共著,思文閣出版,2017)がある。
ビョーン=オーレ・カム(Björn-Ole Kamm)
1981年生まれ。京都大学講師。博士(日本学)。専門は,メディア論,文化越境研究,教育ゲーミング。主な著書に,Role-Playing Games of Japan: Transcultural Dynamics and Orderings.(Palgrave Macmillan, 2020)がある。
エドモン・エルネスト・ディ・アルバン(Edmond Ernest dit Alban)
1989年生まれ。博士(映像論/コンコルディア大学,情報論/パリ第八大学)。専門は,ポップカルチャー研究。主な論文に,”Pedestrain Media Mix: The Birth of Otaku Sanctuaries in Tokyo” in Mechademia, 12.2, 2020などがある。
杉本仁(すぎもとじん)
1947年生まれ。柳田国男研究会会員。専門は,民俗学・地域史。主な著書に,『柳田国男と学校教育――教科書をめぐる諸問題』(梟社,2011)がある。
鶴見太郎(つるみたろう)
1965年生まれ。早稲田大学教授。博士(文学)。専門は,日本近現代史。主な著書に,『柳田国男 感じたるまま』(ミネルヴァ書房,2019)がある。
菊地暁(きくちあきら)
1969年生まれ。京都大学人文科学研究所助教。博士(文学)。専門は,民俗学。主な著書に,『柳田国男と民俗学の近代――奥能登のアエノコトの二十世紀』(吉川弘文館,2001)がある。
川松あかり(かわまつあかり)
1990年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士後期課程在籍。専門は,民俗学・文化人類学。主な著書に,『民俗学の思考法――〝いま・ここ〟の日常と文化を捉える』(共編著,慶應義塾大学出版会,2021)がある。
竹村民郎(たけむらたみお)
1929年生まれ。元大阪産業大学経済学部教授。専門は,経済史。主な著書に,『独占と兵器生産――リベラリズムの経済構造』(勁草書房,1971)のほか,『竹村民郎著作集』(全五巻,三元社)がある。
内田力(うちだちから)
1983年生まれ。東洋大学国際共生社会研究センター研究助手。東京大学大学院農学生命科学研究科特任研究員。博士(学術)。専門は,史学史・歴史理論。主な著書に,『療法としての歴史〈知〉――いまを診る』(共著,森話社,2020)などがある。
室井康成(むろいこうせい)
1976年生まれ。博士(文学)。専門は,民俗学,近現代東アジアの思想と文化。主な著書に,『事大主義――日本・朝鮮・沖縄の「自虐と侮蔑」』(中央公論新社,2019)がある。

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