10月2014のアーカイヴ

受賞報告:パトリック・モディアノ

2014年 10月 22日

パトリック・モディアノ氏にノーベル文学賞

スウェーデン・アカデミーは今月9日、2014年のノーベル文学賞をフランス人作家のパトリック・モディアノ氏に授与することを発表しました。受賞理由は「記憶を扱う芸術的手法によって、最もつかみがたい種類の人間の運命について思い起こさせ、占領下の生活、世界観を掘り起こした」としています。
また、小社で刊行している以下の翻訳作品は10月25日頃に増刷が出来あがる予定です。

『八月の日曜日』(堀江敏幸訳) 2200円
『家族手帳』(安永愛訳) 2500円

 

8月の日曜日・カバーoutline-[更新済み]
八月の日曜日

著者=パトリック・モディアノ
訳者=堀江敏幸
4/6判上製/228頁/定価=2200円+税
978-4-89176-475-9 C0097 好評発売中

ニースの青い空、白い建物、棕櫚の木々。舗道に映る〈私たち〉の影、そしてあの男――。巨大なダイヤモンド《南十字星》をめぐり繰り広げられる孤独な男女の逃避行。フランスで最も人気の高い小説家によるミステリアスな恋愛小説。

 

e5aeb6e6978fe6898be5b8b3efbc9de382abe38390e383bc1家族手帳

著者=パトリック・モディアノ
訳者=安永愛
4/6判上製/240頁/定価=2500円+税
978-4-89176-930-7 C0097 好評発売中

父になったばかりのパトリックは、娘の出生が記録された「家族手帳」を手にする。
しかし、彼は自分がどこで生まれたのか、父母が何という名前だったのか、知らないのだった……。
残された両親の断片的記憶を手がかりに、失われた“自分の出生”を事実と想像を織り交ぜて物語化する鮮烈な自伝小説。

 

*   また、ユーモアで笑わせた後、なるほどと考えさせられる研究に贈られる「イグ・ノーベル賞」の今年の受賞者は北里大学の馬渕清資教授ら4人で、「バナナの皮がやっぱり滑る」ことを科学的に証明しました。小社では、「バナナの皮で滑るギャグ」をマンガ・映画・文学・TV番組などのメディアを通して分析した『バナナの皮はなぜすべるのか?』(黒木夏美)を刊行しておりますので、こちらもぜひお読みください。

banana_cover『バナナの皮はなぜすべるのか?』

著者=黒木夏美
A5判並製/256頁/定価=2000円+税
978-4-89176-777-8 C0095 好評発売中

 

《小島信夫短篇集成》(全8巻)刊行開始!

2014年 10月 22日

人間の生への深い洞察と、独特の浮遊感を孕んだ文体によって古今に類例を見ない実験的な作品世界を創造し、日本の現代文学に新風を吹き込んだ小説家、小島信夫(1915〜2006)。
このたび、生誕100周年を前にし、著者が生涯にわたって書き継いだ全短篇を網羅する、《小島信夫短篇集成》(全8巻)の刊行がはじまります。
〈生きること〉の不可思議を鋭く穿つ初期の代表作から、〈書くこと〉とは何かを問いかけて止まない晩年の作品群、さらには長らく入手困難であった作品や単行本未収録作品もふくめた、170篇以上を一挙に集成しました。
〈文学〉の限界へと果敢に挑み続けた小島信夫の短篇世界が、ようやく全貌をあらわします。

【刊行にあたって】
小島信夫の短篇世界は走る世界だ。人物たちも作中を小走りに走っていることが多いが、文章も走っている。囚われないということを求めているのである。新しい感覚、新しい世界感覚を求めている。新鮮さを実現しようとしているのである。世界の風を全身で感じ取ろうとする。それには走ることだ。その結果、小島信夫の短篇は、美しく華麗な文章でつづられる珠玉の短篇となることを避ける。美しく華麗であることがミジメに見えるからである。世界は動いているのだ。人のこころは揺れながら走っている。そのなかで美しく華麗であることは、もう動かない、もう走らないとうなだれることを意味する。
わが国の戦後小説に、風刺と寓話の深淵を開示した作家、喜劇の予定調和を破って笑劇の実存世界を開示した作家、大正に生まれ、昭和を走り抜け、平成をジョグした小島信夫の短篇世界全域を全8巻にまとめた《小島信夫短篇集成》の出現である。

《小島信夫短篇集成》(全8巻)
編集委員=千石英世・中村邦生/編集協力=柿谷浩一

①小銃/馬(解説=千石英世、8000円+税)★第1回配本(10月27日発売)
②アメリカン・スクール/無限後退(解説=芳川泰久)★第2回配本(11月下旬発売)
③愛の完結/異郷の道化師(解説=堀江敏幸)★第3回配本(12月中旬発売)
④夫のいない部屋/弱い結婚(解説=平田俊子)
⑤眼/階段のあがりはな(解説=いとうせいこう)
⑥ハッピネス/女たち(解説=中村邦生)
⑦月光/平安(解説=保坂和志)
⑧暮坂/こよなく愛した(解説=千野帽子、8000円+税)★第1回配本(10月27日発売)

*A5判上製9ポ1段組み
*各巻300〜600頁程度
*予価5000〜8000円(+税)程度
*第1回配本は2冊同時発売。以後、毎月1冊刊行。2015年4月に全巻完結予定。
*内容見本を用意しております。ご請求ください。

 

10月の新刊:『気配、その美』

2014年 10月 22日

kehai_cover2-1『気配、その美』

著者=千種さつき
A5判並製/224頁/定価=2800円+税
ISBN 978-4-8010-0071-1 C0076 好評発売中!

Creativity of Tea, Now!

ニューヨーク、パリ、ローマ、東京…… 世界各地で友情の〈花〉が開く。Tea-activist SATSUKI のピュアな魂が放つ〈美〉の茶会のすべて。
《茶会の日が決まると、そこへ向けて一気に集中力が増す。頭の中にいろんな実験道具が並べられ、使い方を調べ、調合し、その日を待つ。釜、茶碗、水差などの茶道具、軸、花などの取り合わせをはじめ、季節に合わせた、抹茶。それを引き立てる水、茶会を象徴する菓子、かすかな匂い、人の動作、時には空気を揺らす音、それが闊達な作用をそれぞれに及ぼす時、茶会に場の神が降りてくる。と、それは美の気配が立ち上がる瞬間なのである。》(「まえがき」より)

【目次】
まえがき

《時》をくみあげる茶会
一、 湧き上がる湯……ニューヨーク「温泉茶会」
二、 平安朝の茶会を夢見て……五島美術館「墨林茶会」
三、 中秋の月の光にアフリカの精霊が……東京日仏学院「ワフリカ茶会」
四、 宙点前と「地獄の首都」……セゾン現代美術館「遭遇の茶会」
五、 危機のなかの春……ローマ市主催「3.11義援金募集茶会」
六、 立ち上がる肉体……セゾン現代美術館「青の茶会」
七、 言葉そして鏡……放心庵「坂部先生を送る茶会」

茶会へいざなう《物》

スーツケース……道具は海を越えていく
袖……長いたもとにひそむ謎
足袋……野生を隠す足元の白
菓子……甘い魔力を引きよせる
茶箱……脱皮する茶道具

座談会――晩秋の軽井沢で〈茶〉を語る

跋――「気配の美」 小林康夫

謝辞

【著者】
千種さつき(ちぐささつき)  1953年、福岡県に生まれる。お茶の水女子大学卒業。お茶は、裏千家、櫻井宗養・宗幸先生に師事。お茶の伝統の中にひそむ「気配の美」を求めて、世界各地で実験的な茶会を開催している。

 

9月の新刊:《叢書記号学的実践》『物語における時間と話法の比較詩学』

2014年 10月 22日

物語における書影『物語における時間と話法の比較詩学―― 日本語と中国語からのナラトロジー』

橋本陽介
A5判上製/518頁/定価=7000円+税
ISBN978−4−8010−0057−5 C0098 好評発売中!
装幀者:中山銀士

これまでの物語論の議論を振り返りながら,テクスト言語学的な見地にもとづき個別言語における物語の言語使用を比較・分析しつつ、現行の物語論を日本語と中国語の立場から更新する。ナラトロジーの新しい地平を拓く気鋭の著者の野心作。

【目次】
序論 物語の比較詩学とは何か
第1章 物語論の術語の再検討から比較詩学へ
第2章 語りの位置と物語における時間
第3章 語りの位置と話法
結論 本書の提出する一般理論への課題

【著者】
橋本陽介(はしもとようすけ) 1982年、埼玉県に生まれる。慶應義塾大学大学院文学研究科中国文学専攻博士課程単位取得。博士(文学)。専攻、中国語を中心とした文体論、比較詩学。現在、慶應義塾大学非常勤講師(中国語)。主な著書に、『7カ国語をモノにした人の勉強法』(祥伝社、2013)、『ナラトロジー入門――プロップからジュネットまでの物語論』(水声社、2014)などがある。

【関連書】
ナラトロジー入門――プロップからジュネットまでの物語論 橋本陽介 2800円+税
フィクションの修辞学 W・C・ブース/米本弘一・服部典之・渡辺克昭訳 7000円+税
昔話の形態学 ウラジーミル・プロップ/北岡誠司+福田美智代訳 5500円+税
物語のディスクール G・ジュネット/花輪光・和泉涼一訳 5000円+税
物語の詩学――続・物語のディスクール G・ジュネット/和泉涼一・青柳悦子訳 3000円+税
フィギュールⅢ G・ジュネット/花輪光監訳 3500円+税
小説と映画の修辞学 シーモア・チャトマン/田中秀人訳 5000円+税

 

9月の新刊:『経験と出来事』

2014年 10月 22日

経験と出来事カバー『経験と出来事―― メルロ=ポンティとドゥルーズにおける身体の哲学』

小林徹
A5判上製/405頁/定価=6000円+税
ISBN978−4−8010−0069−8 C0098 好評発売中!
装幀者:atelier fusain

揺れ動く〈身体〉――

「経験」に根差したメルロ=ポンティの思考と,絶えず「出来事」へと滑り込んでいくドゥルーズの思考とを往還しながら,現代における〈身体〉の在り処を指し示す。《「私」とは、実は、無数の他者を含んで変奏され続ける意識のメロディーなのではないだろうか。「世界」とは、実は何よりもまず、絶えずおのれを刷新し、新しいものを無限に生み出していくような創造的力動の劇場なのではないだろうか。「ここでいま」過ぎ去っていくものとは、いったい何なのか。われわれは「現在」の只中で、〈変化〉の方へと目を向け直さねばならない……。》

【目次】
序論

第一部 意味の発生
第一章 世界の経験/第二章 語る言葉と語られた言葉/第三章 言葉と沈黙/第四章 意味の論理学/第五章 出来事の実現と反実現/第六章 思考の発生学

第二部 肉と襞
第一章 世界の奥深さ/第二章 〈肉〉の存在論に向けて/第三章 〈意識〉の哲学――レイモン・リュイエル/第四章 〈情報〉の哲学――ジルベール・シモンドン/第五章 世界という卵/第六章 襞から襞へ

第三部 幻覚的瞬間
第一章 現象的領野/第二章 スタイルの発生/第三章 線の冒険――メルロ=ポンティとアンリ・ミショー/第四章 精神の試練――ドゥルーズとアンリ・ミショー/第五章 絵画の力/第六章 運動と時間――二つの映画論

結論

【著者】
小林徹(こばやしとおる) 1975年,東京都に生まれる。パリ第1大学大学院哲学科博士課程修了。博士(哲学)。専攻、フランス現代哲学。現在,慶應義塾大学ほか非常勤講師。主な論文に,「身体を横断するもの――レイモン・リュイエルの思想」(『フランス哲学・思想研究』第18号,2013)などがある。

 

9月の新刊:《批評の小径》『夢かもしれない娯楽の技術』

2014年 10月 22日

夢かもしれない『夢かもしれない娯楽の技術』

著者=ボリス・ヴィアン
編訳者=原野葉子
四六判上製/264頁/定価=2800円+税
978-4-8010-0058-2 C0097 好評発売中!
装幀=宗利淳一

日常を優雅に遊ぶヴィアン版人生使用法

コルビュジエ風DIYのすすめ、クラシックカーへの偏愛、億万長者になる方法、市バスの生態学、旅行記、戦争論、ロボット社会で生き延びる道……
現実と虚構のあわいで軽やかに綴られたエッセイを、「くらす」「でかける」「まなぶ」の3部に収録。ささやかな日々の暮らしをとびきり贅沢に過ごすための、突拍子もないアイディアが満載!

【目次】
第1部 くらす
極小サイズのアパルトマン
読者への回答
アパルトマンを見つけてしまって……
君に億万長者の素質はあるか?
お上品なだけじゃだめ……思いやりが大事
ディープキスよ永遠なれ
2000年の日曜日
もしも、あと24時間しか生きられないとしたら?

第2部 でかける
乗合バス
1900年風のバカンス
まだ新車を買うなんて!
バカンス行くのも楽じゃない
夢かもしれない娯楽の技術

第3部 まなぶ
民衆の知恵についての監督官=発行人への手紙
超重要問題ならびにその他もろもろについての監督官=発行人への手紙
道徳的等式についての監督官=発行人への手紙
戦争ぺてん師についての副執政官男爵閣下への手紙
建築とSF
文芸批評の効用
詩人ロボットなんかこわくない

訳者解説

【著者/編訳者】
ボリス・ヴィアン(Boris Vian)  1920年、パリ郊外のヴィル=ダヴレーに生まれ、1959年、パリに没する。作家、詩人、翻訳家、ジャズ・トランペット奏者、シャンソン歌手など多彩な方面で活躍した。パリ中央工芸学校を卒業後、技師として勤務するかたわら、旺盛な創作・評論活動を開始。「脱走兵」を始めとするシャンソンの作詞や、ジャズ評論によっても知られる一方、作家としてはヴァーノン・サリヴァン名義による『墓に唾をかけろ』(1946年)で発禁処分をうける。文学作品が正当な評価を得たのは死後のことである。代表作に、小説『日々の泡』(1947年)、『心臓抜き』(1953年)のほか、戯曲『帝国の建設者』(1959年)、旅行案内『サン=ジェルマン=デ=プレ入門』(1974年)などがある。



原野葉子(はらのようこ)  1975年、広島市に生まれる。京都大学大学院博士課程修了。現在、広島文教女子大学講師。専攻、20世紀フランス文学。主な訳書に、レーモン・クノー『文体練習』(共訳、水声社、2012年)、主な論文に、「Poetica pataphysica ボリス・ヴィアンにおけるパタフィジック的想像力について」(博士論文)、「文学空間のn次元を探索する――ペレック/ウリポ/パタフィジック」(『水声通信6』、2006年4月号)などがある。

 

9月の新刊:『まなざしに触れる』

2014年 10月 22日

まなざしに触れる『まなざしに触れる』

著者=鷹野隆大(写真)+新城郁夫(文)
A5判上製/152頁/定価3000円+税
978−4−8010−0047−6 C0072 好評発売中!
ブックデザイン=宗利淳一

 

〈あらゆる境界を侵犯していく影に導かれつつ、政治的かつ美学的な力動として現れる鷹野隆大の写真のまなざしに、私たちは貫かれることになる。〉

主に男性ヌードを撮ることでジェンダーを問う写真家と、その写真のもつ社会へのエロス的侵犯を論じるジェンダー/日本現代文学研究者によるコラボレーション。2人の著者のまなざしはどのように交わり、どのように接するのか。鷹野の写真作品78点を収録。

【目次】
あなたへの距離に触れる
接することと、触れること
物象化に抗して
みずからから抜け出る
対象に見られること
秘密

反=場所
避難都市としての身体

特装版『まなざしに触れる』
A5判上製/クロス装、クロス貼函入/152頁/オリジナルプリント2葉+サイン+エディションナンバー入/収録作品78点/限定30部/定価80000円+税
978−4−8010−0059−9 C0072

オリジナルプリントには下記のAまたはB(各15部)の2枚があります。ご購入にあたって、ご希望がある場合には、AまたはBとご指定下さい。
ただし先着順ですので、品切のさいはご容赦下さい。

A-1
021
A-2
022
B-1
053
B-2
054

【著者】
鷹野隆大(たかのりゅうだい) 1963年、福井県に生まれる。早稲田大学政経学部経済学科卒業。写真集『In My Room』(蒼穹舎、2005年)で第31回木村伊兵衛写真賞受賞。主な個展に、「モノクロ写真」(ユミコ チバ アソシエイツ ビューイングルーム新宿、2012年)、「立ち上がれキクオ」(ツァイト・フォト・サロン、2012年)、「おれと」(ナディフアパート、2009年)などがある。
新城郁夫(しんじょういくお) 1967年、沖縄に生まれる。立教大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。現在、琉球大学教授。主な著書に、『沖縄を聞く』(みすず書房、2010年)、『到来する沖縄』(2007年)、『沖縄文学という企て』(2003年、ともにインパクト出版会)などがある。