水声社 創立30周年出版第1弾《シュルレアリスムの25時》

2009年 11月 19日 コメントは受け付けていません。

水声社 創立30周年記念出版

シュルレアリスムの25時    全10巻

11月末日第1回配本、2冊同時刊行!


「私たちはシュルレアリスムについて、語るべきどれほどのテーマが眠っているか、
いま、はじめて本当に見渡すことができる。」(鈴木雅雄/早稲田大学教授)



sur006《本シリーズの特色》

◎いま、シュルレアリスムを考えるにあたって重要な、
そしてとりわけ日本ではほとんど知られていない
詩人・小説家・画家・写真家10人を選び、全10巻に収録する。

◎ 第一線で活躍する気鋭のシュルレアリスム研究者による書き下ろし。

◎ 各巻に、充実した年譜と書誌を付す。

◎付録として、各作家の本邦初訳のテクストを収録し、
画家・写真家の場合には、図版を豊富に収める。

◎ はじめてシュルレアリスムに触れる方々から、従来のシュルレアリスム像を覆したい研究者まで、
シュルレアリスムとアヴァンギャルド芸術に関心を寄せる、すべての人たちのための新たな入門書。

四六判上製9ポ1段組/各巻平均250頁/予価2500円(+消費税)
隔月に1冊刊行、2011年3月に全巻完結の予定





《全巻ラインナップ》



第1回配本『ゲラシム・ルカ』、『ヴィクトル・ブローネル』刊行迫る!


◎ジョゼフ・シマ 無音の光(谷口亜沙子)

Joseph Sima(1891-1971)  ヤロムニェシュ(ボヘミア)に生まれる。
画家。具象と抽象のあわいを浮遊する八十年の生涯。プラハ時代に始まり、
ブルトン批判を旗幟鮮明にした《大いなる賭け》の画家として、
さらに戦後の沈黙期を経て、一切が溶けあう光の表現へと到達するその歩みは、
「ただひとつの世界」をこの現世に映し出すことだったのか?
境界を生きた瞑想の画家の全貌が浮上する。



◎クロード・カーアン 鏡のなかのあなた(永井敦子)

Claude Cahun(1894-1954)  ナント(フランス)に生まれる。
写真家、作家、思想家。女でもなく男でもない、〈複数形の単数〉クロード・カーアン。
仮面や鏡を使って偽装したセルフポートレートによってジェンダー・
アイデンティティを問い、クイア的視点からもアプローチされている
特異なシュルレアリスト。一九八〇年代後半に再発見され、
一躍世界的な評価をえたその実像に迫る。



◎マクシム・アレクサンドル  夢の可能性、回心の不可能性(鈴木雅雄)

Maxime Alexandre(1899-1976)  ヴォルフィスハイム(アルザス)に生まれる。
詩人、批評家。ドイツ占領下のアルザスという出生から、
すでに宿命づけられたかのように、シュルレアリスムと神という対立する
二つの世界に引き裂かれながら、分裂するアイデンティティの乗り越えを
はかろうとした詩人の生涯を追うとともに、思想史の未来を射程に入れて、
シュルレアリスムはどのように可能なのかを考察する。



◎ルネ・クルヴェル  アンチ・オイディプス・シンプレックスの転生(鈴木大悟)

René Crevel(1900-1935)  パリ(フランス)に生まれる。
小説家。典型的なプチ・ブル、サロンの常連、同性愛者、結核患者、コミュニスト……と、
矛盾に満ちた生を駆け抜けた異端のシュルレアリストにして絶対的自由を渇望する
生粋のロマンティスト。一切の偽善と教条主義を拒んで、かつての仲間とも
敵対するに至ったその生涯と作品を、さまざまな角度から「弁証法」的に照射する。



◎ヴィクトル・ブローネル  燐光するイメージ(齊藤哲也) 第1回配本

Victor Brauner(1903-1966)  ピヤトラ・ニャムツ(ルーマニア)に生まれる。
画家。「ひとはいかにしてシュルレアリストになるのか?」
——マルクス主義の隆盛から第二次世界大戦にいたる激動の時代に、
一貫してシュルレアリスムと向き合い続けた〈魔術的画家〉。
日本でも澁澤龍彦らの賞讃を浴びながら、いまもなお深い闇のなかで
鈍い光を放ち続けるその足跡を丹念に追う果敢な試み。



◎ロジェ・ジルベール=ルコント  虚無へ誘う風(谷 昌親)

Roger Gilbert-Lecomte(1907-1943)  レンヌ(フランス)に生まれる。
詩人。生を壊し、そして死を導きいれること。「不完全な生」を
より完全なものにするため、「生誕以前の世界」=「虚無」へ向けて詩作を
続けること。アヘン中毒、東洋思想への傾倒、そしてルネ・ドーマルらと
《大いなる賭け》グループを組織し、ブルトンらと対抗するという
異端のシュルレアリスム詩人のスキャンダラスな生涯を多角的に追う。



◎ヴォルフガング・パーレン  幻視する横断者(齊藤哲也)

Wolfgang Paalen(1907-1959)  ウィーン(オーストリア)に生まれる。
画家、思想家。「当代まれに見る百科全書的知性」とブルトンによって讃えられる。
パリでシュルレアリスムに身を投じたのち、第二次世界大戦の亡命地メキシコで、
彼がまなざしを向けたのは、アメリカ・インディアンだった——。
多岐にわたるその活動を横断しながら、具象/抽象でのみとらえられる
既存の美術史を逆照射する。



◎ゲラシム・ルカ  ノン=オイディプスの戦略(鈴木雅雄) 第1回配本

Gherasim Luca(1913-1994)  ブカレスト(ルーマニア)に生まれる。
詩人。ドゥルーズに「もっとも重要な詩人のひとり」と評され、
その「ノン=オイディプス」という概念が「アンチ=オイディプス」の
原型になったとも言われる、この「吃音」の詩人が、いかにして
シュルレアリスムを作りかえたのかを読みときながら、
ヨーロッパ・アヴァンギャルドの歴史そのものを書き替える。



◎ジョルジュ・エナン  追放者の取り分(中田健太郎)

Georges Henein (1914-1973)    カイロ(エジプト)に生まれる。
詩人、批評家、ジャーナリスト。国際性と地域性、普遍性と国家、追放者と土地。
これらの間の葛藤を身をもって体験し、戦後の詩と言論の可能性を独自に示しつつ、
エジプトにおけるアヴァンギャルドとシュルレアリスムの展開に
決定的な役割を果たした彼の作品と生涯を追う。



◎ジャン=ピエール・デュプレー  黒い太陽(星埜守之)

Jean-Pierre Duprey(1930-1959)  ルーアン(フランス)に生まれる。
詩人、彫刻家。シュルレアリスムの言語操作を一挙に書き替えんとする
撹乱的で驚異的な作品を残し、二十九歳で自ら命を絶った「最後の呪われた詩人」。
1940〜50年代の、戦後シュルレアリスムの動向を概観しつつ、
わずかに残された作品と、その知られざる生涯を辿る。

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