6月の新刊:フライシャー兄弟の映像的志向――混淆するアニメーションとその空間

2020年 6月 23日 コメントは受け付けていません。

フライシャー兄弟=カバー.inddフライシャー兄弟の映像的志向
混淆するアニメーションとその空間
宮本裕子(著)

判型:A5判上製
頁数:296頁
定価:4000円+税
ISBN:978-4-8010-0497-9 C0074
装幀:宗利淳一
6月25日発売!

▶︎直接のご注文はこちらへ◀︎


アニメーションのオルタナティヴな可能性を探る
実写映像のトレースによって描かれたアニメーション、
実写の人物とアニメーション・キャラクターの直接的なやりとり、
ミニチュアの舞台装置の中で動く漫画絵──
〈実写〉と〈アニメーション〉のはざまに描き出された
フライシャー兄弟の美学とはいかなるものだったのか?
「ベティ・ブープ」や「ポパイ」による成功の傍ら、
混淆する映像空間に拓かれたフライシャー・アニメーションの創造力を、
1920~30年代アメリカの社会・文化状況、映像制作技術、
さらには現代日本のアニメーションへも射程を広げながら展望する。


目次
まえがき

序章 フライシャー兄弟の映像的志向
1 研究の背景と経緯――フライシャー兄弟の「異なる道」
2 理論的な枠組みと研究の方法
3 作品選定と各章構成

第一章 フライシャー兄弟とその作品
1 アニメーション制作以前
2 「インク壺」シリーズの時代
3 フライシャー・スタジオ設立
4 「ベティ・ブープ」シリーズ
5 「ポパイ」シリーズとColor Classicsシリーズ
6 長編アニメーションへの挑戦

第二章 「インク壺」シリーズにおける異なる空間の隣接
1 アメリカにおける最初期のアニメーション
2 「インク壺」シリーズ作の基本構成
3 シリーズ前期――初期アニメーション的な表現の継続と抽象的な空間の隣接
4 シリーズ中期――「手」の存在と映画的虚構空間の拡張
5 シリーズ後期――隣接する空間の形式化
6 描くもの、描かれるものの闘争と「手」のトポス

第三章 動きの次元における異質なものの混淆――キャロウェイ三部作のロトスコープ映像
1 「ベティ」シリーズにおけるキャブ・キャロウェイ
2 キャロウェイ三部作
3 ロトスコープ映像の不気味さ
4 ロトスコープの露出的な使用と抑圧構造
5 キャロウェイの表象とブラックフェイス・ミンストレル
6 キャロウェイ三部作の「原初性」

第四章 ステレオプティカル映像における階層性と質感の不統一――「ポパイ」スペシャル版とアラビア的空間
1 階層化による三次元的なアニメーション映像
2 「ポパイ」スペシャル版におけるステレオプティカル映像
3 テロッテによる議論とアラビア的空間
4 ステレオプティカル映像の脱階層性
5 ステレオプティカル使用の変遷と東西の遠近法

第五章 映像的志向性の帰結するところ――『ガリヴァー旅行記』と『バッタ君町に行く』
1 長編アニメーション二作に対する評価
2 フライシャー的な技術の総動員
3 異種族の混在と「特撮」的な風景のスペクタクル
4 『バッタ君』のナイーブなムードとフライシャーの映像的志向性
5 映像に内在する制作現場
6 巨大な「手」による幇助

終章 混淆する映像の系譜と二項対立の攪乱――フライシャーの映像的志向性が示すもの
1 英語圏における実写とアニメーションの混淆
2 日本のアニメーションに見られる不統一性
3 フライシャーの映像的志向性とPMR
4 二項対立を越えて


参考文献
参考作品
引用図版出典一覧
フライシャー兄弟年表

あとがき

著者について
宮本裕子(みやもとゆうこ)
明治学院大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(芸術学)。現在は、明治学院大学言語文化研究所研究員、明治学院大学、東京造形大学、法政大学非常勤講師。専門は映画・アニメーション研究。主な論文に、「フライシャー兄弟のロトスコープに関する試論――抑圧される黒人身体」(『アニメーション研究』第18巻第2号、日本アニメーション学会、2017年)、「今敏による『パプリカ』の翻案に見る、分裂する女性主人公」(『言語文化』第36号、明治学院大学言語文化研究所、2019年)、「三角関係の曖昧な中心――『胸騒ぎの恋人』における想像的な両性愛性」(『ユリイカ』2020年4月号、青土社)などがある。

関連書
日仏アニメーションの文化論 石毛弓ほか編/2800円+税
リメイク映画の創造力 北村匡平・志村三代子編/3200円+税
黒沢清と〈断続〉の映画 川崎公平/5000円+税

Comments are closed.