12月の新刊:アイデンティティ——断片、率直さ

2020年 12月 22日 コメントは受け付けていません。

アイデンティティ_書影アイデンティティ
断片、率直さ
《批評の小径》
ジャン=リュック・ナンシー(著)
伊藤潤一郎(訳)

判型:46判上製
頁数:140頁
定価:2000円+税
ISBN:978-4-8010-0544-0 C0010
装幀:宗利淳一
12月下旬頃発売!

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フランスとは「誰」なのか?
行政による管理が全般化する社会において、いかにしてアイデンティティを思考することができるのか。ナショナル・アイデンティティについて国民に討論させ、フランスの統合と移民の規制をはかるサルコジの政策に抗して執筆された、現代フランスを代表する哲学者によるアイデンティティの可能性の条件を開く12の断片。

 アイデンティティとは、そこから軌道が出発する落下点——書き込みの点でもよい——なのである。
 定義上、点は次元をもたない。軌道は、この上なく遠く複雑で入り組み、混乱してさえいる道を切り開くことができる。しかし、軌道はつねに点から引かれるのであり、それゆえ軌道とは同じ〔même〕点の軌道なのである。点と迷宮こそ、アイデンティティの秘密だ。それは、一方から他方への絶え間ない接触と絶え間ない裂開である。それゆえ私たちは、一方を失うか、他方のうちに迷い込むよう定められている。おそらく、連続性をしるしづけ、「アイデンティティ」を語ることを可能にする何らかの目印に事欠くことはないだろう——しかし、微小という点の特徴も、絶対に形象化しえないという軌道の特徴もけっして消されえないということはア・プリオリにたしかだ。
(本書より)




目次

日本語版のための序文 

0 断片…… 
1 原因と帰結 
2 安物の赤ワイン 
3 アイデンティティは形象ではない 
4 フランクに 
5 絶対 
6 誰? 
7 なぜアイデンティティを論じるのか 
8 人民 
9 ネーション 
10 帝国 
11 アイデンティティ、内奥 

原註 
訳註 


訳者あとがき 

著者について
ジャン= リュック・ナンシー(Jean-Luc Nancy)  
1940年、フランス・ボルドーに生まれる。現代フランスを代表する哲学者。ストラスブール・マルク・ブロック大学名誉教授。おもな著書に、『無為の共同体――哲学を問い直す分有の思考』(1986年/邦訳、以文社、2001年)、『自由の経験』(1988年/未來社、2000年)、『限りある思考』(1990年/法政大学出版局、2011年)、『イメージの奥底で』(2003年/以文社、2006年)、『モーリス・ブランショ 政治的パッション』(2011年/水声社、2020年)などがある。

訳者について
伊藤潤一郎(いとうじゅんいちろう)  
1989年、千葉県に生まれる。早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。現在、日本学術振興会特別研究員PD。専攻は、フランス哲学、キリスト教思想。おもな論文に、「ジャン゠リュック・ナンシーと人格主義」(『フランス哲学・思想研究』第二二号)、翻訳に、ミカエル・フッセル『世界の終わりの後で――黙示録的理性批判』(共訳、法政大学出版局、2020年)、ジャン゠リュック・ナンシー「あまりに人間的なウイルス」(雑誌『現代思想』第48巻第7号、2020年5月)などがある。

関連書について
モーリス・ブランショ/クリストフ・ビダン/8000円+税
ジョルジュ・バタイユの反建築/ドゥニ・オリエ/4800円+税
レヴィナスとブランショ/上田和彦/4000円+税
プルースト/バタイユ/ブランショ/ロジェ・ラポルト/3000円+税
モーリス・ブランショーー政治的パッション/ジャン=リュック・ナンシー/2000円+税

水声通信 第10号(2006年8月号) 特集 ジャン=リュック・ナンシー/1000円+税

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