8月の新刊:集合的記憶と想起文化

2022年 8月 3日 コメントは受け付けていません。

集合的記憶と想起文化集合的記憶と想起文化
メモリー・スタディーズ入門
アストリッド・エアル(著)
山名淳(訳)

判型:A5判上製
頁数:338頁
定価:4500円+税
ISBN:978-4-8010-0662-1 C0036
装幀:宗利淳一
8月下旬発売!

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文化にとって記憶とは何か?

個々人は常に社会文化的な文脈のもとで想起を行い、文化は、象徴、メディア、相互作用、制度を通じて集合的記憶を確立することで初めて生起する――
われわれの営為の根底に流れ、同時に文化全体を包み込む現象でもある《記憶と想起》に対して、諸学問はいかにアプローチしてきたのか。
社会科学、歴史学、哲学、心理学、そして文学研究など多様な領域にまたがる《記憶研究》の現状をマッピングし、《記憶と想起》を社会文化的な視点からひもとく、最新にして最良の入門書。



目次

第一章 なぜ「記憶」が問題なのか――導入
第一節 「記憶」に注目する理由
第二節 なぜ「記憶」がまさに今日取り上げられるのか
第三節 「集合的記憶」とは何を意味するのか
第四節 重要なのは記憶、想起、あるいは忘却か
第五節 本書の課題および構成

第二章 集合的記憶の発明――文化科学における記憶研究の概観
第一節 モーリス・アルヴァックス――集合的記憶
第二節 アビ・ヴァールブルク――ムネモシュネ、情念定型とヨーロッパの図像記憶
第三節 ピエール・ノラ――記憶の場
第四節 アライダ・アスマンとヤン・アスマン――「文化的記憶」
第五節 「想起文化」――ギーセン特別研究センター434の構想

第三章 記憶――各学問分野におけるアプローチおよび学際的なネットワークの可能性
第一節 記憶の歴史性と社会性――歴史学および社会科学
第二節 記憶の具象性――芸術および文学研究
第三節 記憶の精神性――心理学の記憶研究

第四章 集合的記憶と想起文化――文化記号論的モデル
第一節 メタファー――集合的次元における記憶、想起、そして忘却
第二節 想起文化の物的、社会的、心的次元
第三節 文化の自伝的、意味的、手続き的な記憶システム
第四節 隣接する概念――集合的アイデンティティ、経
第五節 〈想起の様式〉――コミュニケーション的記憶と文化的記
第六節 想起の向こう側――忘却と未来
第七節 流動する想起――超文化的な視点および超国家的な視点

第五章 メディアと記憶
第一節 メディアによる記憶生成
第二節 メディア史としての記憶の歴史
第三節 集合的記憶のメディア――想起文化論の圧縮概念
第四節 記憶メディアの機能
第五節 メディア文化科学における記憶研究

第六章 集合的記憶のメディアとしての文学
第一節 想起文化の象徴形式としての文学
第二節 文学テクストと想起文化のコンテクスト――ミメーシス
第三節 〈集合的記憶〉と〈集められた記憶〉のメディアとしての文学

第七章 物語論のカテゴリー――集合的記憶のレトリック
第一節 集合的記憶のレトリック――五つのモード
第二節 経験型モードとモニュメント型モード
第三節 歴史化モード――文学における歴史記述
第四節 闘争型モード――文学的な想起の抗争
第五節 省察型モード――想起文化についての文学の観察
第六節 想起の歴史に関するナラトロジーの視点

訳注
文献一覧
人名索引
事項索引
訳者あとがき

著者について
アストリッド・エアル(Astrid Erll)
1972年生まれ。現在、フランクフルト大学教授。イギリス・アメリカ学、文学研究、またメモリー・スタディーズを中心とする文化科学を専門とする。2011年にフランクフルト・メモリー・スタディーズ・プラットフォーム(Frankfurt Memory Studies Platform)を設立し、学際的かつ国際的な記憶研究の交流の場として運営している。2004年以降、雑誌『メディアとカルチュラル・メモリー(Media and Cultural Memory)』(ド・グリュイター社)の常任編集委員。
主な著作に、Mediation, Remediation, and the Dynamics of Cultural Memory(with A. Rigney, De Gruyter: Berlin, 2009), Audiovisual Memory and the (Re)Making of Europe(edit. with Ann Rigney, Image & Narrative, 2017), Cultural Memory after the Transnational Turn(Memory Studies, 2018)など、また論文も多数ある。Memory in Culture(Palgrave 2011)およびその原典となるドイツ語のKollektives Gedächtnis und Erinnerungskulturen(2005, 3rd ed. 2017)は定評のあるメモリー・スタディーズの入門書で、数カ国語に翻訳されている。今回訳出したのはドイツ語の増補改訂第三版である。

訳者について
山名淳(やまなじゅん)
1963年、鳥取県に生まれる。広島大学教育学部卒業。同大学大学院教育学研究科博士課程単位取得退学後、ベルリン・フンボルト大学へ留学(ドイツ学術交流会研究奨学生)。博士(教育学)。現在、東京大学大学院情報学環/教育学研究科教授。専門は教育哲学・思想史。
主な著作に、『ドイツ田園教育舎研究――「田園」型寄宿制学校の秩序形成』(風間書房、2000年)、『夢幻のドイツ田園都市――教育共同体ヘレラウの挑戦』(ミネルヴァ書房、2006年)、『「もじゃぺー」に〈しつけ〉を学ぶ――日常の「文明化」という悩みごと』(東京学芸大学出版会、2012年)、『都市とアーキテクチャの教育思想――保護と人間形成のあいだ』(勁草書房、2015年)、『災害と厄災の記憶を伝える――教育学は何ができるのか』(共編著、勁草書房、2017年)、『記憶と想起の教育学――教育哲学からのアプローチ』(編著、勁草書房、2022年)、などがある。

関連書
カズオ・イシグロ 失われたものへの再訪――記憶・トラウマ・ノスタルジア/ヴォイチェフ・ドゥロンク/3500円+税
クリスチャン・ボルタンスキー Lifetime/国立新美術館+国立国際美術館+長崎県美術館(編)/3000円+税
クリスチャン・ボルタンスキー――死者のモニュメント/湯沢英彦/4500円+税
クリスチャン・ボルタンスキーの可能な人生/クリスチャン・ボルタンスキー+カトリーヌ・グルニエ/4500円+税
想起のかたち――記憶アートの歴史意識/香川檀/4500円+税

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