書評『作家の聖別』

2015年 7月 28日 コメントは受け付けていません。

今年の一月に刊行されました『作家の聖別』が書評で取り上げられました。各媒体のみなさま、書評者のみなさま、どうもありがとうございました!


◎週刊読書人(2015年5月15日付)
「掛け値なしに名著と呼べる書物〔……〕いまこそ人文学はベニシューに還らなければならない、ベニシューとともに、社会と文学の現在を考えなければならない」(野崎歓さん)

◎ 図書新聞(2015年4月18日付)
「ベニシューの歴史的展望は、〔……〕ラディカルな思考に裏打ちされている。〔……この〕壮大な四部作は新たな地平を開く鍵となるにちがいない」(工藤庸子さん)

◎ ふらんす(2015年3月号)
「それまでの認識を大きく変え、その後長きにわたって基本的な参照文献となる、記念碑的な著作〔……〕長い期間にわたって緻密になされた読書と思考の見事な産物がここにある」(小倉考誠さん)

作家の聖別——フランス・ロマン主義 Ⅰ
ポール・ベニシュー 片岡大右+原大地+辻川慶子+古城毅訳
A5判上製/688頁/定価=8000円+税
ISBN978-4-8010-0028-5 C0098 好評発売中!
装幀=西山孝司

フランス・ロマン主義の哲学的歴史

驚くべきこと、ほとんど奇跡とも思えることであるが、最初の羽ばたきのときには時代遅れのものに映ったこの偉大な業績は、時の流れを受けて今、永遠の空を飛翔している。——フランソワ・フュレ(革命史家)

19世紀前半、宗教的権力に代わり、世俗的な聖職者たらんとした詩人、文学者たちの「聖別」の過程を克明に追いながら、いかにして文学が高い精神的職務を担うよう求められるに至ったのかを論じる。フランス・ロマン主義を徹底的に解明する長大評論の第一巻。

〈ベニシューのロマン主義研究は、文学的なものの社会的身分規定を探求する歩みそれ自体を通して、非宗教化された社会生活を律しうる新たな正当化原理の形成という、フランス的近代の全体を貫く――そして私たちの生きる近代それ自体の根本的性格とも関わっているはずの――広範な問題系へと道を開く。〉
「ポール・ベニシューとその時代(1)」より

【目次】
作家の行程―ポール・ベニシューへのインタビュー

作家の聖別

序論
第一章 世俗的聖職を求めて
第二章 神聖詩人
第三章 イリュミニスムと詩―ルイ・クロード・ド・サン=マルタン
第四章 反革命と文学
第五章 自由主義派の貢献
第六章 神智論者の詩学
第七章 ロマン主義革命
第八章 偉大な世代の登場
第九章 一八三〇年と〈若きフランス〉

巻末の省察


人名索引

ポール・ベニシューとその時代(一) 片岡大右
訳者あとがき

【著者/訳者について】
ポール・ベニシュー(Paul Bénichou)  1908年、トレムセン(アルジェリア)生まれ。2001年パリに没した。ユルム街の高等師範学校(フランス、パリ)に学ぶ。第二次大戦中のアルゼンチン亡命を挟み、戦前・戦後にかけて長くフランスで中等教育に携わった後、1958年にハーヴァード大学(アメリカ合衆国)に招かれて、以後79年までフランス文学およびスペイン口承文学を講じた。1948年の『偉大な世紀のモラル』(朝倉剛・羽賀賢二訳、法政大学出版局、1993)に始まり、1973年の『作家の聖別』(本書)以降、『預言者の時代』(1977)、『ロマン主義の祭司』(1988)、『幻滅の流派』(1992)と書き継がれた四冊の「フランス・ロマン主義の哲学的歴史」を経て1995年の『マラルメに従って』に至る一連の著作は、17世紀以降のフランス文学・思想史を刷新する壮大なパノラマを描き出している。

片岡大右(かたおかだいすけ)  1974年北海道生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科にて博士号取得。現在、同研究科研究員。フランス文学・思想史。著書に『隠遁者、野生人、蛮人――反文明的形象の系譜と近代』(知泉書館、2012)、最近の論文に« Chateaubriand disciple infidèle de Pascal »(RHLF, à paraître en 2015)、共訳書にF・ドゥノール&A・シュワルツ『欧州統合と新自由主義――社会的ヨーロッパの行方』(論創社、2012)などがある。
原大地(はらたいち)  1973年東京都生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科単位取得退学。パリ第四大学にて博士号取得。現在、慶應義塾大学商学部准教授。フランス語・フランス文学。著書にLautréamont : vers l’autre (L’Harmattan, 2006)、『牧神の午後―マラルメを読もう』(慶應義塾大学教養研究センター選書、2011)、『マラルメ 不在の懐胎』(慶應義塾大学出版会、2014)などがある。
辻川慶子(つじかわけいこ)  1973年大阪府生まれ。京都大学大学院文学研究科単位取得退学。パリ第八大学にて博士号取得。現在、白百合女子大学准教授。19世紀フランス文学。著書にNerval et les limbes de l’histoire. Lecture des Illuminés (Genève, Droz, 2008)、共訳書にブリュノ・ヴィアール『100語でわかるロマン主義』(白水社、2012)などがある。
古城毅(こじょうたけし)  1975年東京都生まれ。東京大学大学院法学政治学研究科にて博士号取得。現在、学習院大学法学部教授。政治学史。主な論文に「商業社会と代表制、多神教とデモクラシー(1)‐(5)」(『国家学会雑誌』第127巻、3・4号‐11・12号、2014)、「フランス革命期の共和政論――コンスタンと、メストル、ネッケル、スタール―」(『国家学会雑誌』第117巻、5・6号、2004)、訳書にブリュノ・ベルナルディ『ジャン=ジャック・ルソーの政治哲学―一般意志・人民主権・共和国』(共訳、勁草書房、2014)などがある。

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