10月の新刊:〈生表象〉の近代――自伝・フィクション・学知

2015年 11月 2日 コメントは受け付けていません。

ピクチャ 1
〈生表象〉の近代――自伝・フィクション・学知
森本淳生(編)

判型:A5判上製 
頁数:496頁
定価:7500円+税
ISBN:978-4-8010-0133-6  C 0090 好評発売中!
装丁:西山孝司


〈生〉の無秩序な増殖に対峙する近代の諸制度――

文学・思想・芸術を構成する様々なジャンルやメディア、学知、学校教育といった近代固有の制度のなかで、人間の〈生〉はいかに媒介され表象されるのか? 自伝的エクリチュールと主体の問題から、権力を内包する社会制度と個人の交錯、そしてフィクションをも用いて表現される不定形な〈生〉を分析することにより、〈近代=モデルニテ〉を横断的に再考する壮大な試み。

「近代における〈生表象〉とは、さまざまな記録媒体が発達するなかでアナーキーに増殖してきた断片的な生の痕跡と、それをさまざまに理解し、規制し、管理しようとする諸制度とが交錯する場である。こうした生表象システムを、文学・思想・芸術の様々なジャンル、作文・日記教育、種々の学問制度についての考察を通して横断的に分析するとき、われわれを現在なお規定している〈近代〉=モデルニテの内実についての新しい視野が得られるのではないだろうか。」(「序」より)



[目次]

序 〈生表象〉とは何か?(森本淳生)

第一部 近代における〈生表象〉の変容

Ⅰ西洋
第一章 戯れ言をまじめに読む――エラスムス『痴愚神礼讃』と古代模擬弁論の伝統(堀尾耕一)
第二章 自伝誕生をめぐる神話――ルソー『告白』受容の一側面(桑瀬章二郎)
第三章 表象の失調へと注がれる眼差し――スタンダールと鏡の経験(片岡大右)
第四章 自伝と過去の現前――レチフ・ド・ラ・ブルトンヌからネルヴァルへ(辻川慶子)
第五章 ジェラール・ド・ネルヴァルの『オーレリア』あるいは書物と人生――「ロマン主義の百足」(ジャン=ニコラ・イルーズ/辻川慶子訳)

Ⅱ日本
第六章 「師」の表象――本居宣長の場合(田中康二)
第七章 歌舞伎役者五代目市川団十郎の引退(廣瀬千紗子)

第二部 教育・額値・帰属性

Ⅰ〈生表象〉と教育制度――日記、作文、手記
第八章 書かされる「私」――作文・日記、そして自伝(安田敏朗)
第九章 「花咲く乙女たち」の作文教育(中野知律)
第十章 「証言の時代」の幕開け――第一次世界大戦戦争文学をめぐって(久保昭博)

Ⅱ〈生表象〉と近代的学知の生成
第十一章  オートフィクションとしての理論――フロイトのケース(立木康介)
第十二章  ライフヒストリー・レポートの無謀と野望――柳田民俗学を「追体験」する(菊地暁)

Ⅲ〈生表象〉の主体と帰属性
第十三章  「戦争詩」から「自伝/オートフィクション」へ――〈生表象〉の帰属と文学性の問題について(吉澤英樹)
第十四章  植民地において〈私〉を語ること、〈私たち〉を語ること――エメ・セゼールからマリーズ・コンデへ(尾崎文太)
第十五章  「女」の自己表象――応答性・被読性と田村俊子「女作者」(飯田祐子)
第十六章  「文学」の拒絶、あるいは不可視の「文学」(坂井洋史)

第三部 自伝とフィクション

第十七章  『わが秘密の生涯』を読む――性をめぐる自伝とフィクション(大浦康介)
第十八章  トーマス・マンの自己表象とモデルネ――『魔の山』を中心に(尾方一郎)
第十九章  ジャン=ポール・サルトル―――生とフィクション(ジル・フィリップ/森本淳生訳)
第二十章  「追憶の計画」――谷崎潤一郎とジョルジュ・ペレックの〈自己〉構築における記憶とフィクション(エステル・フィゴン)
第二十一章 オートフィクションと写真――〈本物〉とは異なる価値観の形成に向けて(塚本昌則)
第二十二章 北京の日曜日――クリス・マルケルからミシェル・レリスに(千葉文夫)

終章 〈文人〉の集合的(自)伝記を書くとはいかなることか?(ウィリアム・マルクス/森本淳生訳)

人名索引
編者あとがき


[編者について]
森本淳生(もりもとあつお) 1970年、東京都生まれ。一橋大学大学院准教授(フランス文学)。著書に、Paul Valéry. L’imaginaire et la genèse du sujet. De la psychologie à la poïétique(Lettres Modernes Minard, 2009)、『小林秀雄の論理――美と戦争』(人文書院、2002年)、訳書に、J・ランシエール『マラルメ セイレーンの政治学』(共訳、水声社、2014年)などがある。




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