3月の新刊:ブラジル文学傑作短篇集《ブラジル現代文学コレクション》

2023年 3月 10日 コメントは受け付けていません。

ブラジル文学_書影ブラジル文学傑作短篇集
《ブラジル現代文学コレクション》
アニーバル・マシャード、マルケス・ヘベーロほか(著)
岐部雅之(編)
伊藤秋仁+神谷加奈子+岐部雅之+平田惠津子+フェリッペ・モッタ(訳)

判型:四六判上製
頁数:207頁
定価:2000円+税
ISBN:978-4-8010-0721-5 C0098
装幀:宗利淳一
3月下旬発売!

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人種・階級・ジェンダーの壁に阻まれる「私」の声
少女の視点から世界の残酷さとシングル・マザーの寄る辺なさが浮かびあがるアニーバル・マシャード「タチという名の少女」、逃げだしたいと口にする褐色の肌の女とそれを引き止めようとする男をみずみずしい筆致で描き出すマルケス・ヘベーロ「扉を開けてくれたステラ」ほか、20世紀ブラジル社会の活力と喧噪を伝える全12篇。



目次
アニーバル・マシャード
 タチという名の少女
 サンバガールの死

ジョズエ・モンテロ
 明かりの消えた人生
 あるクリスマス・イヴに

リジア・ファグンジス・テーリス
 蟻
 肩に手が……

オリージェネス・レッサ
 エスペランサ・フットボールクラブ
 慰門

ハケウ・ジ・ケイロス
 白い丘(モーホ・ブランコ)の家
 タンジェリン・ガール

マルケス・ヘベーロ
 嘘の顛末
 扉を開けてくれたステラ

ブラジル独立二百周年にあたって 
訳者あとがき

著者について
アニーバル・マシャード(Aníbal Machado)
1894年にミナスジェライス州ベロオリゾンチ市近郊の町で生まれ、1964年にリオデジャネイロ市で没する。高校教員や検察官を経て、50歳を前に初めての短篇集『幸せな生活(Vida feliz)』を刊行した。同書に収録の「サンバガールの死(A morte da porta-estandarte)や「タチという名の少女(Tati, a garota)」は映画化もされた。
ジョズエ・モンテロ(Josué Montello)
1917年にラニャン州サンルイス市で生まれ、2006年にリオデジャネイロ市で没する。一九三六年にリオデジャネイロ市へ移り、『閉じられた窓(Janelas fechadas)』を発表した。1994年から2年間にわたりブラジル文学アカデミーの総裁を務めたほか、在仏ブラジル大使館やユネスコブラジル政府代表部で外交官としても活躍。
リジア・ファグンジス・テーリス(Lygia Fagundes Telles)
1923年にサンパウロ市で生まれ、2022年にサンパウロ市で没する。小説『石製のシランダ(Ciranda de Pedra)』は文芸批評家アントニオ・カンジド(Antonio Candido)らから激賞され、『三人の女たち(As meninas)』ではジャブチ賞を受賞。そのほかの作品も国内外で様々な文学賞に輝いている。一九八五年には、ハケウ・ジ・ケイロスに次いで、女性として二人目となるブラジル文学アカデミーの会員に選ばれた。
オリージェネス・レッサ(Olígenes Lessa)
1903年にサンパウロ州レンソイス・パウリスタ市で生まれ、1986年にリオデジャネイロ市で没する。宣教師だった父親の布教活動に付き添った幼少期の経験は、後に小説『太陽通り(Rua do Sol)』となって結実する。1970年代以降は児童文学にも力を注ぎ、およそ40もの作品を発表した。1981年にブラジル文学アカデミーの会員となった。
ハケウ・ジ・ケイロス(Rachel de Queiroz)
1910年にセアラ州フォルタレーザ市に生まれ、2003年にリオデジャネイロ市で没する。二十歳のときに発表した最初の小説『15(O quinze)』は国内で高く評価され、グラッサ・アラーニャ基金賞を受賞。1977年に女性として初めてブラジル文学アカデミーの会員に選出された。ポルトガル語圏の文学賞として権威あるカモンイス賞についても、1993年に女性初の受賞者となった。
マルケス・ヘベーロ(Marques Rebelo)
本名エジ・ジアス・ダ・クルス(Edi Dias da Cruz)。1907年にリオデジャネイロ市で生まれ、1973年にリオデジャネイロ市で没する。1920年代から短篇を書き始め、初の短篇集『オスカリーナ(Oscarina)』を発表。同市の郊外に生きる人々や風景を描いた。また、小説『星は昇る(Aestrela sobe)』はベストセラーとなった。1964年にブラジル文学アカデミーの会員に選出。

編訳者について
岐部雅之(きべまさゆき)
京都外国語大学大学院外国語学研究科博士後期課程満期退学。現在、京都外国語大学講師。専攻はブラジル文学。主な論文に、「『ポリカルポ・クアレズマの哀しき最期』における狂気と懐疑」(『ブラジル研究』第15号、大阪大学外国語学部ブラジル研究会)、主な翻訳に、「リマ・バレット『カリフォルニア異聞』」(『Ignis』第1号、京都外国語大学国際言語平和研究所)、「リマ・バレット『クラーラ・ドス・アンジョス』」(『Ignis』第2号、京都外国語大学国際言語平和研究所)などがある。

伊藤秋仁(いとうあきひと)
京都外国語大学大学院外国語学研究科ブラジルポルガル語学修士課程修了。現在、京都外国語大学教授。専攻はブラジル地域研究、ポルトガル語学。主な著書に、『ブラジル国家の形成』(共著、晃洋書房)、『ブラジルを知るための50章』(編著、明石書店)、主な訳書に、ドラウジオ・ヴァレーラ『カランジル駅――ブラジル最大の刑務所における囚人たちの生態』(春風社)などがある。
神谷加奈子(かみやかなこ)
愛知教育大学教育学部卒業。翻訳家。訳書に、ドラウジオ・ヴァレーラ『移民の町サンパウロの子どもたち』(共訳、行路社)がある。
平田惠津子(ひらたえつこ)
カリフォルニア大学ロサンゼルス校, C.Phil. degree。現在、大阪大学大学院教授。専攻はブラジル文学。主な論文に、「文学に見るブラジルの姿――ロマン主義の場合(1)」(『ブラジル研究』第10号、大阪大学外国語学部ブラジル研究会)、「文学に見るブラジルの姿――『マルチン・セレレ』の場合(2)」(『ブラジル研究』第15号、大阪大学外国語学部ブラジル研究会)、翻訳と解題に、「マシャード・デ・アシス “Paicontra mae”――奴隷制と文学」(『ブラジル研究』第17号、大阪大学外国語学部ブラジル研究会)などがある。
フェリッペ・モッタ(Felipe Motta)
大阪大学大学院文学研究科博士後期課程満期退学。博士(文学)。現在、京都外国語大学講師。専攻は日系ブラジル移民史、移民研究、国際日本学。主な著書に、『移民が移民を考える 半田知雄と日系ブラジル社会の歴史叙述』(大阪大学出版会)、『戦後日本の「帝国」経験――断裂し重なり合う歴史と対峙する』(共著、青弓社)、『日系文化を編み直す――歴史・文芸・接触』(共著、ミネルヴァ書房)、主な訳書に、ドラウジオ・ヴァレーラ『移民の町サンパウロの子どもたち』(監修、行路社)などがある。

関連書
《ブラジル現代文学コレクション》

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