9月の新刊:ヴァージニア・ウルフ『ダロウェイ夫人』を読む——パンデミックからディープタイムまで《水声文庫》

2025年 9月 2日 コメントは受け付けていません。

『ダロウェイ夫人』を読む_書影ヴァージニア・ウルフ『ダロウェイ夫人』を読む
パンデミックからディープタイムまで
《水声文庫》
秦邦生・小川公代(著)

判型:四六判上製
頁数:336頁
定価:3500円+税
ISBN:978-4-8010-0882-3 C00098
装幀:宗利淳一
9月中旬発売!

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『ダロウェイ夫人』出版百周年!
1923年6月半ばのある一日の出来事は、百年後を生きるわたしたちの日常に意外なほど似ているのではないか。パンデミック、トラウマ、人種、ジェンダー、都市空間、トランスナショナル、マルチバース、気候変動……孤立した意識に共感の息吹をもたらすべく、モダニズム文学を現代的に精読する。



目次

まえがき 小川公代


百年後の『ダロウェイ夫人』
秦邦生

現代の小説
ヴァージニア・ウルフ(秦邦生訳)

「そこに彼女がいたから」――『ダロウェイ夫人』における愛と現前
ジリアン・ビア(栁澤彩華訳)

「六月のこの瞬間」――ダロウェイの日からの一世紀
ポール・サンタムール(西脇智也・古城輝樹訳)

読書する時空間――『ダロウェイ夫人』の読者たちを読む
中井亜佐子

ダロウェイ夫人と存在の偶然性――「向かいの家の老婦人」の謎について
田尻芳樹

仮面としての衣服――ファッションから見た『ダロウェイ夫人』と『オーランドー』
小川公代

ヴァージニア・ウルフの「魔法の庭園」――『ダロウェイ夫人』における樹木たちの生死
秦邦生

別の時間とこの人生――『ダロウェイ夫人』を『エブエブ』『歳月』とともに読む
河野真太郎

都市とモダニズム――英語圏現代文学における『ダロウェイ夫人』の残響
星野真志

トランスナショナルな書物史――エンプソン、宮本百合子、左川ちかによるウルフの受容
松本朗

『ダロウェイ夫人』をこれからも日本の大学で読むために――フェミニズムの差異・交差性・人種
松永典子

[インタヴュー]
ヴァージニア・ウルフと韓国文学
斎藤真理子(聞き手・小川公代)

[インタヴュー]
ヴァージニア・ウルフと松田青子文学について
松田青子(聞き手・小川公代)

[作品]
同胞を愛した男
ヴァージニア・ウルフ(片山亜紀訳)

文献案内――〈あとがき〉に代えて
秦邦生

編者/執筆者/翻訳者について
秦邦生(しんくにお) 
1976年生まれ。東京大学准教授。専攻、近現代イギリス文学。主な著書に、『イギリス文学と映画』(共編著、三修社、2019年)、『カズオ・イシグロと日本――幽霊から戦争責任まで』(共編著、2020年)、『ジョージ・オーウェル『一九八四年』を読む――ディストピアからポスト・トゥルースまで』(編著、2021年、いずれも水声社)などがある。
小川公代(おがわきみよ)
1972年生まれ。上智大学教授。専攻、ロマン主義文学、医学史。主な著書に、『感受性とジェンダー――〈共感〉の文化と近現代ヨーロッパ』(共編著、水声社、2023年)、『翔ぶ女たち』(講談社、2024年)、『ケアの物語――フランケンシュタインからはじめる』(岩波書店、2025年)などがある。

ジリアン・ビア(Gillian Beer) 
1935年生まれ。ロンドン大学、ケンブリッジ大学などで教鞭を執る。ケンブリッジ大学名誉教授。専攻、イギリス文学。主な著書に、Darwin’s Plots: Evolutionary Narrative in Darwin, George Eliot and Nineteeth-Century Fiction(Cambridge UP, 1983/邦訳、『ダーウィンの衝撃――文学における進化論』渡部ちあき・松井優子訳、工作舎、1998年), Virginia Woolf. The Common Ground(Edinburgh UP, 1996), Open Fields(Oxford UP, 1996/邦訳、『未知へのフィールドワーク──ダーウィン以後の文化と科学』鈴木聡訳、東京外国語大学出版会、2010年)などがある。
ポール・サンタムール(Paul K. Saint-Amour)
ペンシルヴェニア大学教授。専攻、近現代イギリス文学。主な著書に、The Copyrights: Intellectual Property and the Literary Imagination(Cornell UP, 2003), Tense Future: Modernism, Total War, Encyclopedic Form (Oxford UP, 2015)などがある。
中井亜佐子(なかいあさこ)
1966年生まれ。一橋大学教授。専攻、英文学・ポストコロニアル研究。主な著書に、『日常の読書学――ジョゼフ・コンラッド『闇の奥』を読む』(小鳥遊書房、2023年)、『エドワード・サイード――ある批評家の残響』(書肆侃侃房、2024年)などがある。
田尻芳樹(たじりよしき)
1964年生まれ。東京大学教授。専攻、イギリス文学。主な著書に、『J・M・クツェー――世界と「私」の偶然性へ』(三修社、2023年)、『日常という謎を生きる――ウルフ、小津、三島における生と死の感触』(東京大学出版会、2024年)などがある。
河野真太郎(こうのしんたろう)
1974年生まれ。専修大学教授。専攻、イギリス文学。主な著書に、『〈田舎と都会〉の系譜学――20世紀イギリスと「文化」の地図』(ミネルヴァ書房、2013年)、『ぼっちのままで居場所を見つける――孤独許容社会へ』(ちくまプリマー新書、2024年)などがある。
星野真志(ほしのまさし)
1988年生まれ。慶應義塾大学専任講師。専攻、イギリス文学・文化研究。主な著書に、『ジョージ・オーウェル『一九八四年』を読む――ディストピアからポスト・トゥルースまで』(共著、水声社、2021年)、主な訳書に、オーウェン・ハサリー『緊縮ノスタルジア』(共訳、堀之内出版、2021年)などがある。
松本朗(まつもとほがら)
1971年生まれ。上智大学教授。専攻、イギリス文学。主な著書に、『書くことはレジスタンス――第二次世界大戦とイギリス女性作家たち』(共著、音羽書房鶴見書店、2023年)、主な訳書に、カミーラ・シャムジー『焦げついた影』(早川書房、2025年)などある。
松永典子(まつながのりこ)
早稲田大学教授。専攻、イギリス文学・文化。主な著書に、『アール・デコと英国モダニズム――20世紀文化空間のリ・デザイン』(共編著、小鳥遊書房、2021年)、『キーワードで読むヴァージニア・ウルフ――作品も作家もこの一冊で!』(共編著、小鳥遊書房、2025年)などがある。
斎藤真理子(さいとうまりこ)
1960年生まれ。翻訳者、ライター。主な訳書に、チョ・ナムジュ『82年生まれ、キム・ジヨン』(筑摩書房)、ファン・ジョンウン『年年歳歳』(河出書房新社)、ハン・ガン『別れを告げない』(白水社)、主な著書に『増補新版 韓国文学の中心にあるもの』(イースト・プレス、2025年)などがある。
松田青子(まつだあおこ)
1979年生まれ。作家、翻訳家。『おばちゃんたちのいるところ』が世界幻想文学大賞、日伊ことばの架け橋賞などを受賞。主な小説に、『持続可能な魂の利用』『女が死ぬ』(いずれも中公文庫)、主な訳書に、カレン・ラッセル『オレンジ色の世界』、アメリア・グレイ『AM/PM』(いずれも河出書房新社)などがある。

栁澤彩華(やなぎさわさやか)
東京大学大学院総合文化研究科博士後期課程在籍。専攻、イギリス文学。主な論文に、「「よそ者」化する女性たち――ヴァージニア・ウルフ『歳月』における系譜学・クィアネス・記憶」(『ヴァージニア・ウルフ研究』第40号)がある。
西脇智也(にしわきともや)
1995年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士後期課程在籍。専攻、イギリス文学。主な論文に、「ヴァージニア・ウルフと「文明の虜囚」たち――『ジェイコブの部屋』における成長と「生」のヴィジョン」(『言語情報科学』22)がある。
古城輝樹(こじょうてるき)
1998年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士後期課程在籍。専攻、イギリス文学。主な論文に、「Modernist BildungsromanとしてのSons and Lovers ―― D. H. Lawrenceの不和の美学、女性の成長、スピリチュアリティ」(『関東英文学研究』17)がある。
片山亜紀(かたやまあき)
1969年生まれ。翻訳家。主な訳書にヴァージニア・ウルフ『自分ひとりの部屋』『三ギニー』『幕間』(いずれも平凡社)、『月曜か火曜』(エトセトラブックス)などがある。

関連書
マーガレット・アトウッド『侍女の物語』を読む/加藤めぐみ・中村麻美編/3500円+税
ジョージ・オーウェル『一九八四年』を読む/秦邦生編/3000円+税
カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』を読む/田尻芳樹・三村尚央編/3000円+税
感受性とジェンダー/小川公代・吉野由利編/3500円+税

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