11月の新刊:ジカ熱――ブラジル北東部の女性と医師の物語

2019年 11月 25日 コメントは受け付けていません。

ジカ熱ジカ熱
デボラ・ジニス(著)
奥田若菜/田口陽子(訳)

判型:四六判上製
頁数:251頁
定価:3000円+税
ISBN:978-4-8010-0456-6 C0039
装幀:宗利淳一
11月下旬頃発売!

世界の女性たちへ
2015年ブラジルで流行し、新生児を襲った未知の感染症――ジカ熱。当事者となった女性や医師はなにを信じ、どのような行動を取ったのだろうか。ウイルス特定までの過程を描くなかで、ブラジルの地域格差、リプロダクティブ・ヘルス、孤立する家族といった多角的な問題を浮かび上がらせながら、あらたなケアや連帯を想像させるフェミニスト民族誌。

たとえばジニスは、ジカウイルスの解明に貢献した女性たちの物語を描くことで、彼女たちが単なる「羊水」や「血液」に還元されてしまわないよう、個人の尊厳の回復を目指す。ジェシカやコンセイサンが羊水を提供したことで、またアントニオ医師が患者の血液サンプルを集めてグビオ教授に渡したことで、疾病の原因は明らかになっていったが、そこでは身体の一部は個人と切り離された物質であった。ジニスが、患者の症状を撮影した身体部位の画像を、教会への「奉納物」にたとえていることは印象的である。個人の名前や物語が消されることで、個人の一部を構成する物質や部位は個人を超えて、集合体を表象することになる。ここには、中心と周縁や科学者と人びとといった社会的な区分とは異なる、身体物質と集合体をめぐるカテゴリー化が示されている。「訳者あとがき」より


目次
謝辞 
おもな登場人物 
出来事の経緯 

第1章 語られたこと 
第2章 ジカ、陽性 
第3章 流行初期の女性たち 
第4章 小頭症――ウイルスの足あと 
第5章 患者第一号 
第6章 北東部のその後 
第7章 世界の女性たちへ 

原註 
訳註 
参照文献 
日本語版へのあとがき 

訳者あとがき

著者について
デボラ・ジニス(Debora Diniz)  
1970年、ブラジルのマセイオに生まれる。文化人類学者、ドキュメンタリー映画監督。現在、ブラジリア大学法学部准教授。2005年のドキュメンタリー映画『セヴェリナ物語(Uma História Severina)』のほか七本の映画を製作し、数々の賞を受賞している。本書ポルトガル語版は、2017年にブラジルの文学賞であるジャブチ賞(保健科学部門)を受賞した。主な著書に、『刑務所――女性たちの物語(Cadeia: Relato sobre mulheres)』(Civilização Brasileira, 2015)などがある。

訳者について
奥田若菜(おくだわかな)  
1980年生まれ。大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程満期退学。博士(人間科学)。専門は文化人類学、ブラジル研究。現在、神田外語大学イベロアメリカ言語学科准教授。主な著書に、『貧困と連帯の人類学――ブラジルの路上市場における一方的贈与』(春風社、2017年)、『新版 現代ブラジル事典』(分担執筆、新評論、2017年)などがある。

田口陽子(たぐちようこ)
1980年生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程単位取得退学。博士(社会学)。専門は文化人類学、インド研究。現在、一橋大学大学院社会学研究科講師。主な著書に、『市民社会と政治社会のあいだ――インド、ムンバイのミドルクラス市民をめぐる運動』(水声社、2018年)、『再分配のエスノグラフィ――経済・統治・社会的なもの』(分担執筆、悠書館、2019年)などがある。

関連書
多としての身体――医療実践における存在論/アネマリー・モル/浜田明範・田口陽子訳/3500円+税
部分的つながり/マリリン・ストラザーン/大杉高司・浜田明範・田口陽子・丹羽充・里見龍樹訳/3000円+税
市民社会と政治社会のあいだ――インド、ムンバイのミドルクラス市民をめぐる運動/田口陽子著/4000円+税

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