10月の新刊:文学史の誕生——ギュスターヴ・ランソンと文学の第三共和政《言語の政治》

2020年 10月 24日 コメントは受け付けていません。

文学史の誕生_書影文学史の誕生
ギュスターヴ・ランソンと文学の第三共和政
《言語の政治》
アントワーヌ・コンパニョン(著)
今井勉(訳)

判型:A5判上製
頁数:524頁
定価:7000円+税
ISBN:978-4-8010-0522-8 C0098
装幀:中山銀士+金子暁仁
10月25日頃発売!

▶︎直接のご注文はこちらへ◀︎


文学史の歴史をつくること、それは今日と明日のために考えることである。
個人的な領域からの文学読解を高らかに宣言した「作者の死」(バルト)の祝祭が終焉して久しい。新批評が反抗した実証主義的な「文学研究の歴史」(=文学史)はなぜその回帰をみせたのか? フランス第三共和政における文学制度史を反省的に構築/脱構築するとともに、「文学とはなにか」を見定める記念碑的著作。

《文学理論の時代――偉大な時代――は、文学を歴史的に扱う仕方の長期にわたる絶対的な独占、1900年前後とランソン主義の絶頂期以来、文学史と呼ばれているものの勢いを止めた。とりわけソシュールが二〇世紀初頭に刷新した冷徹な二者択一、おなじみの二律背反によれば、こうだ。共時性か、さもなければ通時性、構造か、さもなければ歴史。振り子が大きく戻るときは、すでに到来しているようである。文学史はあらゆるかたちで不興を買っているが、歴史と文学の関連を放棄することなどできるだろうか。(私が自分の時代を理解したいと望む限り、そんなことはできない。)文学史の歴史を作ること、それは今日と明日のために考えることである。一見回顧的なこの問いは、じつは最も現在的な問いである。第三共和政の草創期(とりわけ当時のイデオロギー的な相貌)は、我々が知るべき緊急の対象である。》……本文より


目次
序――ふたりのバルト

Ⅰ ギュスターヴ・ランソン――人と作品
0 入口 
1 文学ジャンルとしての歴史から歴史学のいち分野としての文学史へ 
2 生まれつつある大学 
3 権力を握る歴史家たち 
4 歴史家 対 修辞家――全面ライバル関係にあった両者 
5 文学史が文学を救う 
6 面子丸潰れの批評 
7 大学における文学 
8 ランソン氏の驚くべき出世 
9 ドレフュスの恩恵 
10 ドレフュスからプチペール・コンブへ 
11 中等教育の法王 
12 普遍教育 
13 老修辞学教師 
14 人はいかにして偉大なフランス人作家となるか 
15 「腰曲がりスカロン未亡人の列福」 
16 文学の不滅は椅子取りゲームである 
17 アクション・フランセーズ 対 ソルボンヌ 
18 ますます手を負えなくなるペギー 
19 文学史の理想――民主主義 
20 文学史の理想――連帯 
21 文学史の理想――祖国 
22 ランソン主義――網羅性の眩暈 
23 個人崇拝 
24 ボスの責任は問われないのか? 
25 サント゠ブーヴ、テーヌ、ブリュヌチエール、ランソン、皆同じ戦い! 
26 テーヌの知的独裁 
27 天才は除いて 
28 作家と人形 
29 大学批評の引退 
30 出口 

Ⅱ それにしても、文学とは何か?

キャプタチオ
プルースト1――読書に反対する
1 図書館 
2 愛書趣味 
3 偶像崇拝 
4 知的利益 
5 読書か人生か 
6 インスピレーション 
7 ヴィジョン 
8 子供、大公、作家 
9 『失われた時を求めて』を読む 

フローベール1――幻想を捨てる翌日

フローベール2、テーヌ1――近代デモクラスリー
1 「ワレ俗衆ヲ厭フ」 
2 フローベール版『現代フランスの起源』 
3 文学史と少々 
4 テーヌ氏とデュムーシェルの友人 
5 フランス的反動の偉大なる書物? 
6 驢馬の足蹴り 

フローベール2、テーヌ2――アドヴァンテージ・プルースト


訳者あとがき


著者について
アントワーヌ・コンパニョン(Antoine Compagnon)
1950年、ブリュッセルに生まれる。コレージュ・ド・フランス名誉教授。専攻、フランス文学。主な著書に、『近代芸術の五つのパラドックス』(水声社、1999年)、『文学をめぐる理論と常識』(岩波書店、2007年)、『ロラン・バルトの遺産』(みすず書房、2008年)、『第二の手、または引用の作業』(水声社、2010年)などがある。
訳者について
今井勉(いまいつとむ)
1962年、新潟県に生まれる。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。現在、東北大学大学院文学研究科教授。専攻、フランス文学。主な著書に、『ポール・ヴァレリー『アガート』――訳・注解・論考』(共著、筑摩書房、1994年)、『ヴァレリーにおける詩と芸術』(共著、水声社、2018年)、『愛のディスクール』(共著、水声社、2020年)、主な訳書に、コンパニョン『第二の手、または引用の作業』(水声社、2010年)などがある。

関連書
『第二の手、または引用の作業』/アントワーヌ・コンパニョン/8000円+税
『文学との訣別――近代文学はいかに死んだのか』/ウィリアム・マルクス/4000円+税
『オイディプスの墓――悲劇的ならざる悲劇のために』/ウィリアム・マルクス/3500円+税

Comments are closed.