4月の新刊:谷崎潤一郎と映画の存在論

2022年 4月 4日 コメントは受け付けていません。

ブログ_谷崎潤一郎谷崎潤一郎と映画の存在論
佐藤未央子(著)

判型:A5判上製
頁数:317頁
定価:4000円+税
ISBN:978-4-8010-0612-6 C0095
装幀:真田幸治
4月下旬頃発売!

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〝映画の魔〟に魅入られて、
映画、この欲望と快楽のメディアを題材として取り上げるのみならず、媒体の特質、俳優の身体、興行形態、鑑賞行為といった構造的要素までをも小説へと移植した谷崎潤一郎。
その強靭なる映画的思考/欲望は、いかにして〝映画小説〟の血肉となったのか。
映画の富を小説においても展開し、みずからの文学に新生面を開くまでの作家の足跡を緻密にたどり、谷崎文学のさらなる深みを開削する。

***
谷崎は映画という存在をメディア/芸術/産業面から複層的に捉えて物語化した点で、現代に至る文学と映画の協働関係における先駆の作家と位置づけられる。……映画小説において、谷崎は映画を単に尖端的な題材として恣意的に選択したのではなく、媒体的特質や流通過程を有機的に文脈化した。映画を観る、あるいは消費し、愛玩する行為と空間をその在り方に仮託して表象したのだ。(序章より)


目次

序章 谷崎潤一郎と近代映画史
1 映画を観ること・語ること
2 研究史と問題の所在
3 本書の方法と構成

第Ⅰ部 映画の潮流

第一章 〈シネマニア〉谷崎の誕生
1 近代映画史と谷崎
2 映画製作の現場で
3 関西へ渡って
4 映画界との距離

第二章 「人面疽」の〈純映画劇〉的可能性――映画化計画をめぐって
1 純映画劇運動と〈物語〉の希求
2 映画『人面疽』特報から
3 女優百合枝のストラテジー
4 「腫物」表象とアトラクション
5 映画化の(不)可能性

第三章 「月の囁き」考――〈映画的文体〉を書く/読む
1 「読物」としての映画劇
2 映画ノベライズと脚本の諸相
3 「月の囁き」と映画的文体
4 〈感光〉する綾子/「感染」する章吉
5 映画から言語へ

第Ⅱ部 映画製作と欲望の物語

第四章 「肉塊」と映画の存在論――水族館―人魚幻想、〈見交わし〉の惑溺
1 「向う側の世界」の誘い
2 水族館―映画館という装置
3 誘惑する人魚
4 現実と幻想の惑乱
5 〈肉塊〉の官能とブルー・フィルム

第五章 「青塚氏の話」のドラマツルギー――映画製作/受容をめぐる欲望のありか
1 「由良子」は誰のものか?
2 デミル/シュトロハイムと女体表象
3 商品としての女優
4 視覚的快楽から肉体の享楽へ
5 欲望の果てに

第Ⅲ部 映画を夢む

第六章 「魔術師」、視覚のゆらめき――「半羊神」の狂乱
1 スペクタクルへの欲望
2 起源としての魔術
3 「視覚の作用」と〈性〉のゆらぎ
4 「半羊神」の夢
5 映画の魔術性

第七章 記憶のフィルムと羊皮紙――「アヹ・マリア」と映画語
1 〈映画〉を語る
2 記憶への意志
3 騙られる映画
4 「宇宙のフイルム」とベルクソニズム
5 再生される〈マリア〉

第八章 「盲人」の夢――「春琴抄」と映画哲学
1 「春琴抄」映画化に際して
2 「眼を閉ぢた時の視覚世界」
3 夢見と想起
4 表象の囚人
5 Eyes Wide Shut

終章 映画テクストの極北
1 総論
2 映像の強度


主要参考文献
参考映画作品
あとがき

著者について
佐藤未央子(さとうみおこ)
1988年、仙台市に生まれる。同志社大学大学院文学研究科国文学専攻博士後期課程修了。博士(国文学)。現在、法政大学文学部日本文学科助教、早稲田大学総合人文科学研究センター招聘研究員。専攻、日本近代文学、映画学。主な著書に、『台湾愛国婦人 復刻版 別冊(解題・総目次・執筆者索引)』(共著、三人社、2020年)、主な論文に、「谷崎潤一郎の映画受容(1)-(6)」(『同志社国文学』2014-19年)、「上山珊瑚の足跡――新劇/映画女優としての位置」(『同志社国文学』2021年)、「映画「葛飾砂子」を辿る――失われた映画を求めて」(『論集 泉鏡花 第六集』2021年)、「〈理蕃〉のメディア戦略――愛国婦人会台湾支部の映画利用を基軸として」(下岡友加・柳瀬善治編『『台湾愛国婦人』研究論集――〈帝国〉日本・女性・メディア』広島大学出版会、2022年)などがある。

関連書
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