書評『〈殺し〉の短歌史』

2010年 7月 29日 コメントは受け付けていません。

koroshi_cover-2単なる「死」ではなく、
単なる「事件」でもない。
もっぱら「殺し」という「事件」にこだわり、
「殺し」をキーワードとして
近現代の短歌や歌人を読み解く
異色の論集が、現代短歌研究会編の
『〈殺し〉の短歌史』
です。


編者名義の現代短歌研究会とは、戦後の短歌批評を
その尖端で担った故菱川善夫氏が中心となり、
結社を越えて若手の歌人や研究者が結集した研究会です。
そのかれらの活動の成果の総決算である本書について、
さっそく各紙で続々と書評・紹介が掲載されて、
歌壇・短詩の世界を確実に席巻しつつあります。

◎毎日新聞(7月11日付)歌壇「詩歌の森へ」
「〔本書における短歌とは〕つねに時代の最先端の空気を敏感に
感受するべきものという考えで、刺激的な事件である〈殺人〉をはらむ
社会との関係を問うという斬新な試みである」(酒井佐忠さん)


◎朝日新聞(7月19日付)歌壇「短歌時評」
「引用されている短歌を読んでいるだけで、歌人がどれくらい
〈殺し〉好きかがわかる。執筆陣も〔……〕多彩で比較的若い世代に
及んでいることを特筆しておくべきだろう」(田中槐さん)


◎北海道新聞(7月18日付)歌壇「書棚から歌を」
「〔本書所収の秋本進也論文は〕南満州鉄道(満鉄)設立に
関与したといわれる〔夢野久作の父・杉山〕茂丸の裏面を、
久作が注視した歌群だという仮説を提示した。
新鮮で、鋭利な猟奇歌論の登場と思う」(田中綾さん)



現代短歌研究会 編

〈殺し〉の短歌史

A5判上製280頁/定価2800円+税
ISBN978-4-89176-787-7  C0095  好評発売中!

殺すくらゐ 何でもない
と思ひつゝ人ごみの中を
濶歩して行く
——————(夢野久作)

短歌というメディアは、いかに《時代》と切り結んできたのか?


1910年の大逆事件から、第2次世界大戦、前衛短歌、
戦後の政治運動を経て、21世紀の無差別連続殺人事件に
いたるまで、この100年におよぶ〈殺し〉の近現代を、
短歌という《方法》によって剔抉する。
《短詩型新時代》の旗手たちによる稀有な成果。

執筆:田中綾、谷岡亜紀、松澤俊二、森本平、
中西亮太、福島久男、秋元進也、田中拓也、森井マスミ、
大野道夫、川本千栄、黒瀬珂瀾、三井修

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