1月の新刊:都会喜劇と戦後民主主義

2021年 1月 26日 コメントは受け付けていません。

都会喜劇と戦後民主主義都会喜劇と戦後民主主義
占領期の日本映画における和製ロマンチック・コメディ
具珉婀(著)

判型:A5判上製
頁数:271頁
定価:4000円+税
ISBN:978-4-8010-0535-8 C0074
装幀:宗利淳一
1月25日発売!

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〝敗戦の記憶〟から〝未来への希望〟へ
都会を舞台に若い男女の自由恋愛を描くモダンで洗練された娯楽映画〝都会喜劇〟。
占領期に現れたこれらの作品群が指し示したのは、敗戦の経験に直面し、それを超克し、あるいは隠蔽しながら民主的思想を内面化していく、日本人の新しいアイデンティティの姿であった。
新時代のとば口に立つ人々は何を欲望し、何を夢見ていたのか?
細緻な文献調査に加え、木下惠介、島耕二、渋谷実、川島雄三、市川崑らの都会喜劇作品の分析によって民主主義イデオロギー下における大衆の想像力/創造力を闡明する、占領期文化研究の新機軸。

***

これまで顧みられることなく学問的研究から排除されてきた都会喜劇を、占領期のプログラム・ピクチャーを支えたジャンルに規定し、社会的・文化的・政治的な文脈に置いて検討を行うことで、都会喜劇が敗戦と占領という歴史的トラウマを抱えていた日本人を共鳴させた感性が確認できるだろう。自由恋愛として表象される民主主義を一方的に宣伝するための民主主義啓蒙映画ではなく、観客と映画産業との相互作業の産物として都会喜劇が製作され、享受される過程に注目することで、占領期の日本映画をより多角的に捉えることが本書の目標である。(序章より)



目次

序章 占領期と都会喜劇
第一節 占領下の映画界
第二節 民主主義の旋風
第三節 歴史的カテゴリーとしてのジャンル
第四節 本書の構成

第一章 占領期の言説における都会喜劇
第一節 都会喜劇とは何か
第二節 都会喜劇の原型
第三節 アメリカナイゼーションへの欲望と抵抗

第二章 ジャンルとしての都会喜劇
第一節 ジャンルを構成する要素
第二節 都会喜劇の物語構造
第三節 都会喜劇の舞台
第四節 都会喜劇の題材と類型的キャラクター

第三章 社会統合のユートピア
第一節 葛藤を解消する象徴的な物語
第二節 偽装に隠された真実を求めて――『東京のヒロイン』(1950年)
第三節 民主主義国を牽引する青年の肖像――『天使も夢を見る』(1951年)
第四節 戦争の亡霊からの脱却――『情熱の人魚』(1948年)

第四章 欲望と不安の交錯
第一節 試練に立つアメリカナイゼーションの夢
第二節 ユートピアからの脱出――『自由学校』(1951年)
第三節 幻影を破る男性――『結婚行進曲』(1951年)

終章 歴史的カテゴリーとしての都会喜劇


参考文献
参考映画作品

あとがき


*取り上げる主な作品
『お光の縁談』(池田忠雄・中村登、松竹、1946)
『情熱の人魚』(田口哲、大映、1948)
『花婿三段跳び』(瑞穂春海、松竹、1949)
『お嬢さん乾杯!』(木下惠介、松竹、1949)
『グッドバイ』(島耕二、新東宝、1949)
『東京のヒロイン』(島耕二、新東宝、1950)
『自由学校』(渋谷実、松竹、1951)
『自由学校』(吉村公三郎、大映、1951)
『盗まれた恋』(市川崑、新東宝、1951)
『東京のお嬢さん』(瑞穂春海、松竹、1951)
『天使も夢を見る』(川島雄三、松竹、1951)
『適齢三人娘』(川島雄三、松竹、1951)
『結婚行進曲』(市川崑、東宝、1951)


著者について
具 珉婀(ク・ミナ)
韓国の東国大学校演劇映像学部卒業。明治学院大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(芸術学)。現在、明治学院大学言語文化研究所研究員、国立映画アーカイブ研究補佐員。専攻、映画学、メディア文化論。
著書に、『川島雄三は二度生まれる』(共著、水声社、2018年)、『偽善への挑戦 映画監督川島雄三』(共著、ワイズ出版、2018年)、『渋谷実 巨匠にして異端』(共著、水声社、2020年)、論文に、「『しとやかな獣』に見る家族の意味」(『Bandaly 明治学院大学大学院文学研究科藝術學専攻紀要』第12号、2013年)、「周防正行の小津安二郎論――変態家族・兄貴の嫁さん」(『Bandaly 明治学院大学大学院文学研究科藝術學専攻紀要』第14号、2015年)、“Postwar American-Japanese Relations and Atomic Bomb in Japanese Film”(The Journal of Image and Cultural Contents, Vol. 19, 2019)(in Korean)、“Korean’s Cold War Cosmopolitanism and Asian-Pacific Film Festival”(Asian Cultural Studies, Vol. 49, 2019)(in Korean)などがある。

関連書
渋谷実 巨匠にして異端/志村三代子・角尾宣信編/5000円+税
川島雄三は二度生まれる/川崎公平・北村匡平・志村三代子編/3200円+税
リメイク映画の創造力/北村匡平・志村三代子編/3200円+税
黒沢清と〈断続〉の映画/川崎公平/5000円+税
フライシャー兄弟の映像的志向――混淆するアニメーションとその空間/宮本裕子/4000円+税

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