3月の新刊:団地映画論

2021年 3月 10日 コメントは受け付けていません。

団地映画論団地映画論
居住空間イメージの戦後史
今井瞳良(著)

判型:A5判上製
頁数:318頁
定価:4000円+税
ISBN:978-4-8010-0551-8 C0074
装幀:宗利淳一
3月23日発売!

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建チ上ガレ団地映画。
団地から見渡す戦後映画史&住宅史

戦後の住宅難を受けて建設された《団地》は、日本人の新しい生活様式を象徴する憧れの的であったが、高度経済成長が下火となる1970年代にはその新奇性は早くも揺らぎ、80年代以降は社会発展の残滓・病理とみなされ、今やノスタルジアの象徴でもある。
歴史の中で「新時代」「密室」「郊外」「不気味」「懐古」など千変万化のイメージをまとってきた団地は、映画においては覗きの標的、昼下りの情事の寝床、活動家の潜伏地、男の子たちの戦場、幽霊の住処……など、相貌を変えながらもやはり時代の息吹を指し示す存在としてあった――
つねに同時代を代弁/批評してきた《団地映画》を解読し、「住むこと」の変遷を描き出す、はじめての本格的団地映画論!

***

本書が明らかにするのは、「団地族」から「団地妻」を経て「ノスタルジア」へ至るという団地イメージと連動する戦後史の語りに対して、日本映画が団地映画として批評性を持ち続けていたという事実である。戦後日本の近代を象徴する団地のイメージに多大な影響を持った団地映画には、「居住空間イメージ」として近代批判の視点が内包されていたのである。(序章より)


目次

序章 団地映画を問題化する
1 「居住空間イメージ」としての団地映画――『団地への招待』
2 戦後史における団地
3 映画の空間論
4 日本映画史における団地
5 団地とは何か
6 本書の構成

第Ⅰ部 「憧れ」の団地

第一章 選ばれない団地
1 選ばれないサラリーマン
2 サラリーマンと団地
3 団地から遠く離れて――『喜劇 駅前団地』
4 団地を見上げる――『下町の太陽』
5 サラリーマン映画と団地映画

第二章 団地映画の家族たち
1 沈黙のクロースアップ――『しとやかな獣』
2 『しとやかな獣』の団地
3 間取りと住まい方の実践
4 「雨漏りのするバラック」から「穴だらけの団地」へ
5 川島雄三と団地の戦後

第三章 火を吹くゴジラと燃えない団地
1 本多猪四郎の「噓」とフランケンシュタインの「限界」
2 火を吹くゴジラの襲来
3 燃えない団地の登場
4 団地から断絶されるフランケンシュタイン――『フランケンシュタイン対地底怪獣』
5 ゴジラとフランケンシュタインと団地

第Ⅱ部 「団地妻」たちの団地

第四章 立ち上がる団地の母親たち
1 団地の主婦と「政治性」
2 立ち上がる主婦たち
3 子どもを通した人間関係――『私は二歳』、『団地 七つの大罪』
4 立ち上がれない直子――『彼女と彼』
5 住環境と主婦の「政治性」

第五章 日活ロマンポルノに現れた「団地妻」
1 「団地妻」言説と団地妻シリーズ
2 ロマンポルノと団地妻シリーズ
3 ロマンポルノ言説の登場
4 「密室に籠もる団地妻」イメージ
5 「団地妻映画」の誕生
6 団地妻シリーズの展開
7 白川和子と団地妻イメージ
8 「団地妻」言説と戦後史

第Ⅲ部 団地映画と「日常」

第六章 団地とメディアと若松孝二
1 若松孝二の「密室」
2 「風景論」の「密室」
3 メディアに接続された「密室」――『壁の中の秘事』
4 メディアの回路を切断する――『現代好色伝 テロルの季節』
5 若松孝二の「政治性」

第七章 団地文学のアダプテーション
1 フレームと団地
2 団地文学と『燃えつきた地図』
3 仮住まいから終の住処へ――『燃えつきた地図』
4 団地とビニールハウスの闘争――『遠雷』
5 「メルヘン」の批評性

第Ⅳ部 団地映画の「成熟」

第八章 団地映画はノスタルジアの夢を見るか?
1 団地とノスタルジア
2 団地の歴史性
3 父親たちの団地――『家族ゲーム』、『トカレフ』、『毎日が夏休み』
4 子どもたちの団地――『震える舌』、『ゴンドラ』、『どこまでもいこう』
5 団地の「成熟」と「恐怖」

第九章 ホラーの舞台としての団地
1 Jホラーと境界
2 音響/フレーム/団地の境界
3 『クロユリ団地』の境界
4 境界を越える明日香
5 不気味な少女

結論


団地映画一覧
参考文献一覧
図版出典一覧
索引
あとがき

著者について
今井瞳良(いまいつぶら)
1988年、愛知県に生まれる。京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程修了。博士(人間・環境学)。現在、茨木市立川端康成文学館学芸員。専攻、映画研究。主な論文に、「多様なハンセン病者を可視化する――らい予防法廃止後の映画『愛する』」(『CineMagaziNet!』No. 21、2018年)、「「文豪とアルケミスト」と文学館――川端康成文学館における「川端康成×横光利一」展示を例に」(『横光利一研究』第17号、2019年)などがある。

関連書
都会喜劇と戦後民主主義――占領期の日本における和製ロマンチック・コメディ/具珉婀/4000円+税
渋谷実 巨匠にして異端/志村三代子・角尾宣信編/5000円+税
川島雄三は二度生まれる/川崎公平・北村匡平・志村三代子編/3200円+税
黒沢清と〈断続〉の映画/川崎公平/5000円+税
リメイク映画の創造力/北村匡平・志村三代子編/3200円+税

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