6月の新刊:『レメディオス・バロ』

2014年 7月 30日 コメントは受け付けていません。

レメディオス・バロ
レメディオス・バロ――絵画のエクリチュール・フェミニン

カトリーヌ・ガルシア

湯原かの子訳

A5判上製/272頁/定価=4000円+税

978-4-8010-0044-5 C0070 好評発売中

装幀=宗利淳一


私たちが生命と呼ぶものは非現実であり、死と呼ぶものも非現実であり、ただ織布・画布(トワル)だけが現実なのだ。――オクタビオ・パス

人間として、芸術家として、女性であるということの根源的問いを発しつづけた画家レメディオス・バロ。シュルレアリスムの実験的手法、秘教思想に学びつつ、死と再生、人間と世界の宇宙的循環を、画布の上で自由に織りなす独創的な幻想世界を、女性性による創造の秘密から探究する。
「バロはいくつかの作品で、編物をする女性を入れ子構造にし、自分自身の創作行為を描いている。作品制作は、たえず織り直される織物に似て、進展、啓示、閃きがあるが、後戻り、反復、停滞もある。人間と世界のイマージュが決定的に定義されることはなく、つねに刷新されうるのである。」(本文より)

【目次】
第一章 レメディオス・バロとその研究方法
1 マージナルな絵画
2 伝記的要因――バロはシュルレアリストか?
  アカデミックな美術教育 一九〇八―一九二四
  シュルレアリスムへの傾倒 一九二四―一九三一
  前衛芸術家との接触――実験的初期作品 一九三一―一九四〇
  メキシコ亡命とその影響 一九四〇―一九四七
  円熟する創作活動――独創的な作品 一九四七―一九六三
3 ハイブリッドな絵画
4 人物、フォルム、女性の地位――自己探求か?
5 神話的人物像――新しい空間の探求か?

第二章 アポリア
1 抑圧的な運命、耐え忍ぶべき社会的役割 『予感』『塔の方へ』『ご婦人方の幸福』『オーロラ』
2 取るに足らない知識 『突然変異した地質学者の発見』『反抗的な植物』
3 他者の存在の脅威 『曲がりくねった道』『恋人たち』
4 自己観察の虚しさ 『出会い』『模倣』
5 アポリアの人物像

第三章 新たな地平へ
1 神話的時間と地理的空間の探検 『枯葉』『オリノコ河の水源の探検』『不毛の道』
2 キリスト教神話の探求 『邂逅』『奇術師または軽業師』
3 人間の運命の再検討 『天体の狩人』
4 女性の役割の探求 『地球のマントに刺繍しながら』『ミノタウロス』『笛を吹く人』『星光線による創造』『赤い編物をする女』
5 新たな地平を開く人物像

第四章 均衡
1 運命を支配する 『星粥』『宇宙の中心』
2 見いだされたアイデンティティ 『出逢い』『座った女』
3 糸を紡ぐ女のイマージュ 『ヴェロナの編物をする女』『織物をする女』
4 存在の充実、創造的次元 『鳥の創造』
5 均衡のとれた人物像

第五章 独創性
1 独自な空間の構築
1―1 空間の探求
    所与された空間
    選択された空間
    夢想された空間
1―2 独自な空間
    マチエールの効果
    パースペクティヴ
    変容した空間
2 構築、脱構築――地面
  滑らかな地面、固い地面
  変幻自在な地面
  変容した地面
3 光と影
  「なにも見ていない」
  光溢れる宇宙の夜
  影
4 女性人物の表象――身体の夢想
  特徴のない身体
  束縛された身体
  身体の夢想
  気化した身体――表現不可能か?
  他者を宿す身体
5 存在の生地――変容する衣服
  お仕着せの衣服
  衣服、批評の対象
  変容する衣服
  入れ子構造の衣服

結論 バロにおけるエクリチュール・フェミニン

図版一覧

レオメディオス・バロ略歴

参考文献

訳者解説


【著者】
カトリーヌ・ガルシア(Catherine Garcia) パリ第八大学でスペイン文学、スペイン絵画を学び、とくに女性表現者による創作について研究する。スペイン語・スペイン文学のアグレジェ(教授資格保有者)として、現在パリで教鞭をとる。本書は著者初の単著にして、フランス語によるバロに関する最初の本格的なモノグラフィである。
 
【訳者】
湯原かの子(ゆはらかのこ) 上智大学仏文科卒。九州大学大学院、上智大学大学院を経てパリ第四大学文学博士号取得。フランス文学・比較文学専攻。上智大学他非常勤講師。評伝作家。主な著書に、カミーユ・クローデル――極限の愛を生きて』(朝日新聞社、1988)、『ゴーギャン――芸術・楽園・イヴ』(講談社、1995)、『絵のなかの生』(ミネルヴァ書房、2003)、『藤田嗣治――パリからの恋文』(新潮社、2006)、主な訳書に、テレーズ・ムールヴァ『その女(ひと)の名はロジィ――ポール・クローデルの情熱と受苦』(原書房、二〇一一)、クレール・ド・デュラス夫人『ウーリカーーある黒人娘の恋』(水声社、二〇一三)などがある。
 
【関連書】
齊藤哲也『ヴォルフガング・パーレン 幻視する横断者』〈シュルレアリスムの25時〉 3500円+税
齊藤哲也『ヴィクトル・ブローネル 燦光するイメージ』〈シュルレアリスムの25時〉 3500円+税
谷口亜沙子『ジョゼフ・シマ 無音の光』〈シュルレアリスムの25時〉 3200円+税

【湯原かの子の本】
ウーリカ――ある黒人娘の恋 クレール・ド・デュラス夫人 1500円+税

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