1月の新刊:『ウーリカ ある黒人娘の恋』

2014年 7月 30日 コメントは受け付けていません。

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クレール・ド・デュラス夫人

湯原かの子訳

四六判上製/104頁/定価=1500円+税

装幀=齋藤久美子

978-4-8010-0017-9 C0097 好評発売中

悲しいかな、私はもはや
誰にも属していなかったのです。
私は人類すべてに対して
異邦人だったのです!

18世紀、フランス革命のさなか、パリの貴族社会で愛に焦がれ、「悲恋」に存在を賭した黒人少女の、異色の愛の告白小説。
「内面は白人貴族として成長したにもかかわらず、シャルルへの恋をきっかけに自分の肌の色と黒人奴隷という出自を意識せざるをえなくなったウーリカの、外面と内面の乖離。〔……〕どこにも自分の場を見出せない永遠の異邦人としての宿命。いくら問いかけても答の得られない、この世の不条理と神の沈黙。ウーリカの苦悩と絶望、心を蝕む病理は、まさに20世紀の実存主義や精神分析を先取りしている、といっても過言ではない。」(訳者解説より)

【著者】
クレール・ド・デュラス夫人(Mme Claire de Duras) ブルターニュ地方の由緒ある貴族を父に、マルティニク島の富裕な一族出身の女性を母に、1777年、ブレストで誕生。女子修道院の寄宿学校で教育を受けるが、フランス革命期にルイ16世の処刑に反対した父が革命裁判所で死刑判決を受け、母とともに海外で亡命生活を送る。革命終結後、ルイ18世に仕えるデュラス公爵と結婚、王政復古後はサロンの中心的人物となり、スタール夫人やシャトーブリアンらと親しく交遊、みずからも創作活動に従事する。1828年歿。主な作品に、『ルイ16世の思索』、『エドゥアール』、『オリヴィエまたは秘密』、『サン=ベルナールの僧侶』、『ソフィーの日記』、『不可触賤民』、『アメリとポリーヌ』などがある。本書は、フランス文学において有色人種の女性を主人公にした最初の作品として、近年、再評価が著しい。

【訳者】
湯原かの子(ゆはらかのこ) 上智大学仏文学科卒。九州大学大学院、上智大学大学院を経てパリ第Ⅳ大学文学博士号取得。フランス文学・比較文学専攻。上智大学他非常勤講師。評伝作家。主な著書に、『カミーユ・クローデル――極限の愛を生きて』(朝日新聞社、1988)、『ゴーギャン――芸術・楽園・イヴ』(講談社、1995)、『絵のなかの生』(ミネルヴァ書房、2003)、『藤田嗣治――パリからの恋文』(新潮社、2006)、主な訳書に、テレーズ・ムールヴァ『その女(ひと)の名はロジィ――ポール・クローデルの情熱と受苦』(原書房、2011)などがある。

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